「あなたは何をしてくれるんですか?」

 食事は一日一食、子どもたちは学校にも行けず、カースト内の人からは人間扱いもされない。本来、社会から歓迎されるべき子どもが産まれても、女の子だったら売春宿に売ってしまう。今現在でもそのようなことが日常で行われている、日本では信じられないようなことが起こっている場所。

 そういう生活を余儀なくされている方々に私たちは何ができるのか、ということを探しに行くためのホームステイのはずでした。しかし、すぐに自分の甘さを思い知ることになります。私たちが村を回るたびに大歓迎されるのです。

「私たちの生活を救ってくれるんですか?」
「お金を置いていってくれるんですか?」
「何をしてくれるんですか?」

 でも、私は何もできなかった。完全な言い訳ですが、お金もスキルも人脈もない大学生です。私は何もしてあげられないし何も持っていない。

 しかし、最初は「何をしてくれるのか」と期待の目で見られていた私が何もできない存在だとわかっても、彼らは優しいままでした。日々の生活の足手まといになるだけなのに、2ヵ月の間、寝食を共にして家族のように接してもらうばかり。

 そのとき一番印象ショックだったのは、彼らの生活と私たちの生活、つまり貧困とジュエリーが結びついている、ということ。

「どうして世の中はこういう構造になってしまったんだろう?」

 そんな疑問は強烈に私の心に残りましたが、イギリスに帰ってからは鉱山労働に関して自分なりに調べつつも、行動を起こせないまま卒業を迎えることとなりました。

 日本に帰った私は、国際協力とはまったく畑違いの不動産投資会社に入社することにしました。無闇に国際協力に絞るのではなく、ひとまず、資本主義の世界でビジネスを学ぼうと思ったのです。もし、それで国際協力への情熱が消えたなら、それは仕方がない、と。