週刊ダイヤモンド 今週号の特集は、日本の発明力、つまり技術に軸足を置いてみました。金融資本経済が瓦解した今日、景気回復のカギは、技術による新たなイノベーション、新市場の開拓にあるからです。

 世界でも、米国の「グリーンニューディール政策」を筆頭に、環境や新エネルギーへの投資で景気回復を図る動きが活発化して来ました。いずれにせよ、景気回復のカギを握るのが技術であることは、間違いありません。

 60ページの大特集なので、「発明」「技術」の切り口は多岐に渡りますが、不景気なニュースに食傷気味な方にとって、まずおススメなのは「明るい話題」です。

 それは、「技術立国ニッポン」を象徴する環境やエネルギーの技術を紹介した記事です。藻を燃料にしたり、海底資源を開発したり、二酸化炭素を回収して地中に埋めたりする技術を紹介します。

 リニアモーターカーやプラグイン・ハイブリッドカー、超電導ケーブル、ハイテク便器など、数年後には大市場となっているであろう技術も徹底分析しました。

 これらは、かつては「雲をつかむような夢の類」でしたが、今日では手が届きそうな「目標」になったことが、最大のポイントです。

 「家電芸人」の出現で密かなブームとなっている家電も、製品別に機能やトレンドを紹介するなど、大きく採り上げます。21世紀に入って、家電価格はデフレという経済環境に逆らい、高価格化して来ました。

 その背景には、高機能化をどんどん競い、それによって高級家電のマーケットが生まれたことがあります。一昔前は最高級品でもせいぜい3万円程度が相場だった炊飯器も、今や10万円が相場です。

 「高機能=高付加価値=新たなニーズとマーケットを創造」という、他業界もうらやむ好循環サイクルのヒントが、家電市場には隠されているのです。

 しかし、明るい話題ばかりじゃありません。やはり冷静に見直したい現実がありました。

 それは、「発明件数や技術力ではトップ水準にある」と自負する日本において、何故か企業があまり儲かっていないことです。

 そこで、「発明や技術が本当にカネを生んでいるのだろうか?]という疑問に迫りました。

 省エネ技術や環境技術で先行している日本ですが、今後は「技術をしっかりとビジネスに結びつけられるか否か」が、重要になって来ます。そこで、特許件数ではなく、「特許価値」のランキングを作成し、「本当に発明力のある会社」を探りました。

 もう1つ、いわゆる「知的財産戦略の甘さ」も課題です。丸裸になり、海外へダダ漏れとなる日本の特許公開制度に始まり、技術を抱えた人材の流出が尽きないことなど、目を覆いたくなる現実に迫り、問題提起をします。

 人物に迫ったインタビュー記事もありますが、目玉は「日本の発明をリードする100人」の紹介。彼らの意見も参考にしながら、夢と課題に触れていただきたいと思います。

 もちろん、発明によって株価が上がりそうな企業の一覧も忘れておりません。“現世ご利益”を重視する方は、必見です!


(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木豪)