米国で民主党の大統領候補予備選挙が白熱している。新進のオバマ候補が優位に戦いを進めていたが、追い込まれたクリントン候補も、3月4日の予備選挙では善戦し、候補者選びは長引きそうな気配だ。経済政策に関して、民主党両候補と共和党の候補指名獲得を確実にしたマケイン候補との違いは大きい。大統領選挙の結果は、米国の経済政策の行方を大きく左右しそうだ。

 民主党のオバマ、クリントン両候補と共和党のマケイン候補の経済政策を分けるのは、政府の役割に関する哲学である。

 党派を超えた融和を訴えるオバマ候補の経済政策も政府の役割を強化する方向にあり、民主党本流である。大筋で小さな政府を主張するマケイン候補とは立場が違う。

 オバマ候補が政府の役割強化を主張するのは、格差拡大への問題意識が強いからだ。オバマ候補は、ブッシュ政権下の米国では、経済成長の成果が公平に分配されてこなかったと指摘する。

 政府による所得再配分機能強化を目指すオバマ候補の象徴的な提案が、高所得層増税と中間層以下向け減税を組み合わせた税制だ。2010年末で期限切れとなるブッシュ減税のうち、高所得層向け部分の廃止で年間約1000億ドルの税収増になる。その一方で、勤労世帯に対して一世帯当たり最高1000ドルの還付可能な税額控除を実施するなど、中間層以下の国民を対象に年間800億~850億ドルの減税を実施する考えだ。

オバマとクリントン
経済政策に大差なし

 こうした考え方は、クリントン候補にも共通する。実際のところ、クリントン候補とオバマ候補の経済政策には大きな違いはない。細目こそ違うが、クリントン候補も中間層以下を対象にした減税を提案する。その財源は、やはり高所得層増税である。選挙戦では、医療保険制度改革において、オバマ候補と違い、クリントン候補が個人に保険加入を義務づけている点が論点になっている。しかし、政府の役割を拡充し、国民皆保険制を目指す点では両者は共通する。

 共和党のマケイン候補は、民間活力を重視した小さな政府路線を提唱する。税制に関しては、低税率が基本。ブッシュ減税の恒久化に加え、法人税率の引き下げを提案している。