松田 たしかに、日本に残って新しいビジネスを立ち上げるほうが、ずっとラクです。あるいは自分で何もしなくても、さまざまな方からいろいろなオファーをいただけたりもします。でも私は、そういう道は選ばない。なぜなら、「自分は弱い人間である」ことをよく知っているからです。

「食」を通じて日本文化を
世界に発信するのが自分の使命

高城 今は、成功した人ほどシンガポールに拠点を移す傾向があります。税制等を考えて、あちらで悠々自適に暮らそうというわけです。でも、松田さんの場合は、まるで違いますね。

松田 おっしゃるとおり。今は3つのプランを持っていますが、そのうち2つは「食」に関するものです。日本食・日本文化のすばらしさを、シンガポールを経由して世界に発信したい。日本の政治は三流、経済ももはや一流とはいえません。しかし文化なら一流と呼べるのではないでしょうか。それを世界に広めること、「食」を通じた文化の架け橋になることが自分の使命だと思っています。

高城 たしかに日本の歴史をひも解いてみると、海外で日本文化が高く評価された例はよくありますね。逆に日本人がその様子を見て、その価値にあらためて気づいたり。

松田 私が狙っているのも、まさにそういうことです。海外の人に評価されると、日本人も「日本っていいよね」と思えるようになる。そうやって文化を発信する側が自信を持てば、「一流」にますます磨きがかかると思います。

 特に、私が日本文化の中でもっともすばらしいと思うのが「食」。どの国や地域に行っても、日本食にはかないません。だから、それをシンガポールに持っていくわけです。

高城 ただし、今は世界が同時不況に見舞われています。シンガポールも例外ではないと思いますが。

松田 たしかにシンガポールの外食産業も日本並みに落ち込んでいます。なぜこんな大変な時期にスタートするのかとも思いますが、逆に、「今だからこそスタートするんだ」という思いもある。悪い時期にスタートしたものは、強くなりやすいのです。

 先日も、起業を目指す方を対象にした講演で、「今なら成功する可能性は高いはず」という話をしてきました。ピンチはチャンスです。外食でいえば、今は家賃などの固定費や原材料費も低く抑えられるし、いい人材も採りやすい。それに、お店のキャパシティにおいても、今だからこそ始めるメリットはあると思います。

 たとえば、景気のいい時期にキャパシティが100人の店を始めたとします。しかしその後、景気が悪くなったときにお客さんが60人に減ってしまったらどうでしょうか? 当然、経営は苦しくなります。しかし、今のような景気の厳しい時期にキャパシティが60人の店で始めていれば、あとは増えるだけです。

 不況時に始めるメリットはまさにここにあります。これから1~2年をサバイバルできたビジネスは、確実にうまく行くと私は信じています。