「今のような飼料価格高騰が続くならば、われわれ畜産農家は廃業するしかない」
バイオ燃料への利用拡大によるトウモロコシ需給の逼迫等で、家畜用配合飼料の価格が急騰している。
2006年10月には1トン当たり約4万2600円だった飼料価格が、今年1月には5万8100円と、じつに36%も上昇。国内の配合飼料消費量は年間2400万トンともいわれるため、年換算すればじつに約3720億円もの負担増となる計算だ。
とはいえ、値上げ分のすべてを畜産農家が負担しているわけではない。農家と配合飼料メーカーがカネを拠出する「通常補填基金」が、飼料価格上昇分を補填している。同基金への1トン当たり積立額は、農家が500円、配合飼料メーカーが1000円の合計1500円だ。
だが、飼料価格の急騰により、積み立てた財源は吹き飛び、「今年2月で約100億円の財源不足になる」(農林水産省畜産振興課)。
そのため、今年度は、国と配合飼料メーカーが折半で積み立てる「異常補填基金」から通常補填基金へ無利子で融資を行なう。だが、異常補填基金も「補填金の増加で財政状況は枯渇している」(異常補填金交付事業を行なう配合飼料供給安定機構)ため、来年度は通常補填基金に対して初めて、「銀行借り入れの金利分を国庫から助成する予定」(農水省)という。
いずれにせよ、補填基金が補填金を支払うために借り入れを増やすことで、財政状況はさらに悪化する恐れがある。
また、仮に財源が確保できたところで、当面、農家の飼料コストが増加し続けるのは確実だ。
補填基金は、直近1年間の平均価格を上回った額を補填する仕組みのため、価格上昇が続けば平均価格も上がり、農家の負担額は増えることになる。
実際、2006年10月から現在までに、農家の実質負担額は1トン当たり7700円も増加している。
そして冒頭のとおり、飼料価格高騰の最大の理由はバイオ燃料による逼迫であり、今後もトウモロコシ需要の拡大が予想される。
飼料価格高騰の長期化により、今後、畜産農家の廃業が増える可能性は高い。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹)