前回は、会社の社員の働きに対する「期待」と会社が支払う「報酬」がバランスすることや、報酬を構成する要素についてご紹介した。今回は、報酬が具体的にどう決まるかをご理解いただくために、人事制度の中で重要な等級制度の仕組みと給与がどのように連動しているかについて紹介しよう。
あなたの給与を決める「等級制度」とは?
会社員である多くの読者の皆様は、会社で各社員に等級というものが付いており、かつ、ご自分がどの等級に属しているかもご存じだと思う。では、等級とは何か、どう決まるのかについてはご存じだろうか?
まず、「等級」とは、社員の働きに対する会社の期待を何段階かのレベルに分類し、社員をグループ化しているものだ。会社はこの等級を基本給や賞与の金額を決める基準としている。つまり、あなたの報酬金額に直結する重要かつ、けっこう身近な制度なのだ。その等級制度の仕組みについて知ることは、自分の給与を理解する上で役に立つので、少し説明が長くなるがお付き合いいただきたい。さて、実は、この等級の決め方にも2種類ある。
等級は、「能力」を基準に分類するか、「職務」を基準に分類するかの2種類に大別される。(図1)
前者は、社員が保有する「職務遂行能力」(略して職能)で分類しており、職能等級、職能資格等級と呼ばれる。各等級それぞれに、「~することができる」といった能力要件が示されていて、社員はその要件を満たしているかどうかで、どの等級に属するかが決まる。簡単に例えれば、「Aさんは他部署と連携を取りチームをまとめるスキル(能力)があるから、4等級。Bさんは、チームのメンバーと連携して業務を行うことができるが、部門外の関係者の調整はまだうまくできないので、3等級」といった具合である。
それに対して、後者は、会社の中のそれぞれの「職務の大きさ」で分類しており、職務等級とか役割等級と呼ばれる。
職務というと少しわかりにくいかもしれないが、簡単に言えば仕事の内容の大きさと考えればよい。各職務の内容を記した「職務記述書」と呼ばれるものがあり、これに基づいて、職務の大きさを比べる(これを職務評価と呼ぶ)。職務評価で職務の大小が決まるので、同じくらいの大きさの職務を同じ等級として位置付ける。