目標管理の中止と3つの行動指針

 沢井はようやくハラが固まってきた自分を感じていた。

 では、何から手をつけるか。
 金のかからないうまい手はないか。

 沢井は家に帰ってからも考え続けた。そして考えに考えた末、次の三つの言葉を得た。

 ⑴オレがやる
 ⑵協力する
 ⑶明るくする

 7月下旬の部長会議に、沢井は二つのことを提案した。

 一つは、現在行なわれている当社の目標による管理は完全に形骸化しているので、このさい中止したいこと。
 当面予算と月次実行計画で運営していく。

 もう一つは、この三つの言葉をこれからの当社の行動指針としたい。
 そして8月1日の朝礼で社員にアピールしたいと提案した。

 沢井はこの件についてかなり熱っぽく説明したのだが、メンバーたちの反応は空虚なものであった。
 誰も反対する者はいなかったが、それは「どうでもいい」「どうぞご自由に」「お手並み拝見」という程度の賛成であった。
 岡田と藤村ですら、この件については十分な理解には至っていないようであった。(第1章おわり)

※連載は本日で終了です。この続きは、『黒字化せよ! 出向社長最後の勝負』でお読みください。

【目次】
♦プロローグ  出向内示 ──黒字化せよ、さもなくば清算だ
♦第1章 赴任【7月】 ──あきらめきった無気力な社員たち
♦第2章 「オレがやる、協力する、明るくする」【8月】 ──改革が始まる
♦第3章 本音のコミュニケーションとストローク【9月】 ──社員の士気を高める方法
♦第4章 会社は社員とその家族の幸せのためにある【10月】 ──沢井社長の経営哲学
♦第5章 がむしゃらに頑張って何トンできる?【11月】 ──瞬間最大風速をつかめ!
♦第6章 赤字の正体【12月】 ──絶望の先に答えがある
♦第7章 新しい年、新しい社章【1月】 ──三か年計画の発表
♦第8章 ベテラン社員、ついに動く【2月】 ──組織が生まれ変わるとき
♦第9章 月産200トン体制に向けて【3月】 ──人が燃え、組織が動く
♦第10章 黒字浮上【4月】 ──人はみな能力を秘めている
♦エピローグ 黒字達成までをふり返る ──同時並行多面作戦の展開

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実話をもとにした迫真のストーリー!
人が燃え組織が燃える! マネジメントの記録

■ストーリー■
大企業で役員目前だった沢井は、ある日突然、出向を言い渡される。出向先は万年赤字の問題子会社。辞令にショックを受けつつも、1年以内に黒字化することを決意した沢井だが、状況は想像以上に悪かった。やる気のない社員、乱雑で老朽化の進む職場…。しかし、新しく人を雇ったり設備投資をするような予算はない。今ある人材、今ある設備で黒字化できるのか。(本書は、『黒字浮上! 最終指令』〈小社刊・1991年〉を改題・改訂したものです)

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