できるだけ新鮮な方がいいとこだわる人もいれば、賞味期限などちょっとくらい切れていても平気、という人もいる。そのあたりの感覚は個人差が大きいため、対応は難しい。どっしり構えた人のなかには宅配用の受け箱をちょっとしたクーラーボックスのように使う人がいて、見ている方がヒヤヒヤしてしまう。

 牛乳の受け箱といえば。

「じつはあれ、有料だって知ってました?」と、神谷さんが問う。

「お客さんが支払うんですか?」

「いいえ、販売店がメーカーから買うんです」

 価格は大きさに応じて800円から1000円。壊れて取り替える場合も販売店側の持ち出しになる。したがって、「汚れたから交換して欲しい」とお客さんに言われてしまうと悩ましい。

「それに加えて、昨今はチラシも有料でメーカーから買わないといけなくなっていまして」

 こちらは1枚あたり3円。むろん、お客さんには無料で配る。商品を売るためのチラシを買わなくてはならないとは不思議だが、メーカー側に言わせると、こんな事情もあるらしい。

「宅配する商品の多くはスーパーやコンビニエンスストアでは販売していない特殊なものなんです。ビタミンや鉄分、カルシウム、グルコサミン、コラーゲン、ヒアルロン酸などの成分が添加されている。そのため、勝手に効能や効果をチラシで書くと、薬事法にひっかかる恐れもあるらしいんですね」

 そんな訳で、販売店が独自のチラシを作ろうとすると、メーカーから注意を受けてしまうこともあるそうだ。

牛乳配達で医者いらずのカラダに!
しかし経営に手を出すと……

 そんなこんなで、牛乳販売店の経営は見た目ほどのんびりしている訳でもなければ、楽でもなさそう。

 むろん、宅配ビジネスは基本的に同じお客さんと長くつきあう訳だし、顧客とのコミュニケーションをとりながら地域にも貢献できるいい商売ではある。ただし、それと利潤追求を両立させようとすると、相反する命題にも直面する。

「基本的には受け箱に届ける訳ですから、お客さんと会う機会はそう多くはありません。それに、絆を深めようと長話をすると、配達に時間がかかってしかたがない。配達の効率を高めようとすれば、お客さんとの絆も弱くなる……だから、いろいろと悩ましいですね」