法人税減税への3つの堤案

 民主主義を前提とする限り、法人税率の引き下げなど、政策は政府の判断の問題である。ただし、政府は財政再建にもコミットしており、成長と財政再建をどう両立するかが問題となる。あらゆる政策は制約条件の中で考えなければならない。税率を引き下げれば経済は成長するといった憶測ではなく、科学的な根拠と信頼性あるプランを国民に示す必要がある。

 アベノミクスで経済が上向いたことは評価すべきだが、株価維持のために法人税率の引き下げを考えているのであれば本末転倒だ。甘利明経済財・再生担当相は、法人税率について、「30%を切っていく姿が市場にインパクトを与える」(「日本経済新聞」5月6日)と本音をもらしている。政効果の疑わしい減税によって、財政赤字を増やし、子供たちに更に負担を転嫁するのはもうやめるべきである。財政規律の点では、安倍政権は民主党政権より悪化している。信頼性と透明性を高める観点から、法人税減税に当たり、以下を提案したい。

 第1に、成長率の前提である。アベノミクスでは、名目成長率3%、実質経済成長率2%を掲げている。極めて野心的な目標であるが、政治的なスローガンとしては、それでもよい。しかし、財政への影響や中期見通しでは、成長率は慎重な水準とするべきである。それは世界の常識だ。現在の財政の中期推計では、アベノミクスが成功するバラ色のシナリオでも、2020年度までには基礎的収支の均衡は達成できないが、法人税率引き下げにより、更に成長が加速され、目標が達成できると見積もるのであろうか。英国では、独立財政機関である予算責任局が成長率等の見通しを作成して、政治的なバイアスを取り除こうとしている。

 第2に、減税は財政に対して中立とし、それを担保するため、増税や歳出にかかる施策を含めて、財政への影響を詳細に分析する必要がある。単年度で財源が完全に手当される必要はないが、複数年で手当てされることを示す信頼できる2020年度までの計画が必要だ。また、減税の効果を予測し、結果の検証を行うことも求められる。