人のせいにせず、自分で選択する喜びを知ってほしい

 このように、私にとっての転機は偶然海外での経験でしたが、それは違う環境に身を置いたことが大きいでしょう。つまり、居心地の悪いところに行けばいくほど学びがあるのです。

 今、社会に出ることを恐れる若者が多いと聞きます。確かに社会が豊かで、働かなくてもいきなり飢え死にはしませんが、それでは本当の意味で自立したとは言えません。

 働くということは経済的に自立することで、それは、自分で好きなところに住み、好きなところで働き、好きなことをする楽しさを手に入れるということです。さらに、守ってもらう立場から、誰かの役に立てる存在になるということ。そこに意味があり、やりがいもあるのです。その基本をわかっていれば、親のアドバイスに沿って選ぶもよし、自分で始めるもよし。何から始めてもいいと思います。しかし、その時大事なのは、自分で決めるということです。どんなことでも思うに任せないことはあります。その時自分で決めたことでなかったら人のせいにするかもしれません。

 子どもの行く末が心配なら、一人でも生きられる力をつけてあげることです。そのためには、小さい頃から自分で選ぶ喜びを教えることです。例えば自分の着る服を選ぶのでもいいでしょう。もし、とても寒い日に半袖を着たいと言ったとしても、それを否定せずやらせてみる。その結果寒い思いをしたら、次には気温を確認して服装を調整するようになるでしょう。このように、小さな失敗と再チャレンジの経験を繰り返す中で、大きなディシジョンを下す力が身についていくのです。

 これは会社でも同じです。今の若い人はルールを求める傾向があります。ルールを守ることも大事ですが、もし全員がルールを守るだけだったら、進歩が生まれず、会社は潰れてしまいます。今のやり方で果たしていいのか、何のためにこのルールがあるのかと疑って考えることが大事です。それも小さい頃から家庭で訓練することで身につくことです。家庭の影響は大きいですね。

夢はいつ見つかるかわからない。それを捕まえる準備は怠らない

 中高生に向けてよくお話することですが、夢の見つけ方は人それぞれです。ピンポイントでやりたいことがあるなら、そこに向けて最短距離で向かえばいいけれど、そうでないなら、その可能性を狭めないために準備をしておくこと。いつ見つかるかわからない夢を実現するために、自分の選択肢を増やしておくことです。大学のブランドで何かが保障されるわけではありませんが、大学に行けば学ぶ場は広がります。留学すれば、もう一歩世界を広げることになります。

 しかし、すべてを整えたとしても、幸せが約束されている訳ではありません。人事の仕事をしていると特にそう思いますが、たとえ恵まれない環境であったとしても、本人が学ぶことを止めなければ、絶対に道は開けるので諦めないことです。保護者の皆さんは安心安定を与えたいと思われるかもしれませんが、これからは逆に、いかに多様なものに触れる環境を与えられるかを、考えていただきたいですね。

 

PROFILE
四方ゆかり(よも・ゆかり)
グラクソ・スミスクライン株式会社 取締役。大学卒業後日商岩井(株)を経て、ゼネラルエレクトリック(GE)に転職。日本人として初めてGEにおける将来の人事リーダーを養成するプログラムに参加、同時に米国における人事勤務も経験。プログラム卒業後は、GE キャピタルカーシステム、GE フリートサービスを経て、GE 横河メディカルシステム取締役人事部門長となる。AIU 保険会社人事担当執行役員、マイクロソフト(株)執行役人事本部長を歴任したのち、グラクソ・スミスクライン(株)取締役(人財本部責任者)に就任。同時に経済同友会幹事と学校と経営者の交流活動推進委員会副委員長も兼務。

 

公益社団法人経済同友会 学校と経営者の交流活動
「活力ある21世紀の日本社会を支えて行く人材の育成・教育」のために、主に中学校や高校を対象に企業経営者の出張授業や講演活動(教員・保護者等)を原則として無償で行っています。

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