前回のステップ2までで、決裁プロセスを確認したうえで決裁者と面談をし、商談の結論を出す期限を合意するところまで実行できました。ここまで来ると、正式な商談としてドライブがかかり、次はいよいよ商品提案!と気がせきますが、どんな商品を提案するかは、お客様の問題を正しく把握できていることが前提となります。そこで、このステップ3では、公開情報から企業を分析する基本手法と、その後、お客様企業に直接課題を聞き出す重要性を述べていきます。

まず、公開情報から業界共通の課題を知る

 さて、ステップ2まででお客様と商談の結論を出す期限に合意できたら、次の提案活動に入る前に、お客様の業界環境とお客様が対処すべき課題(解決が必要な問題)をあらためて整理しておきます。

 もちろん、初回訪問の前に、最低限の情報は調べたと思います。でも、お客様の課題や問題の原因がはっきりわからないうちは、最適な商品・サービスの提案はできません。

 また、こちらがいいと思う商品を、お客様の話も聞かずに提案すると、その奥にある本当の問題点や課題を聞き出せなくなってしまうおそれもあります。これでは、みずから成約につながる大事な機会を捨ててしまうも同然です。仮に、この段階でお客様の信頼を失うと、後からでは取り返しがつきません。

 急がば回れ!です。

 まずは、公開情報をもとに、お客様の業界環境や課題について調べていきましょう。

 法人向け営業の場合、お客様が上場企業であれば、ホームページの「投資家情報」に有価証券報告書など必要な情報が載っていますので、簡単に入手できます。未上場の企業であっても、ホームページや、社長が新年度の初めに出す年頭所感などをよく読むと、お客様の課題が浮かび上がってきます。

 また、上場企業であれば、企業価値検索情報サービス「ユーレット」(2014.5現在無料)などを利用すれば、約5分で「売上高」「利益」「株主構成」「役員構成」「対処すべき課題」といった情報を簡単に見ることができます。お客様が未上場企業であっても、このサービスを使って、お客様と似た事業構成の上場企業を選んで課題を理解し、そこからお客様独自の問題について仮説を立てる方法は有効です。

コツは、市場を細分化して調べること

 このとき、いきなり対象企業だけを調べるのでは不十分です。

 重要なのは、最初に自分なりの基準をつくって市場(同業種)を細分化(セグメンテーション)することです。その後で、各セグメントに応じた課題分析を行いましょう。なぜなら、あるお客様の課題は、そのお客様固有のものではなく、同じセグメントに属する他のお客様にも当てはまることが多いからです。

 セグメンテーションはさまざまな分け方ができますが、代表的なのは業種別です。たとえば、流通、製造、金融、通信・メディア・公益、公共の5つの業種で市場を区分するのです。そしてさらに、流通であれば小売、運輸、倉庫、サービスなど細分化していくのです。さらに小売であれば、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア…と分けられます。こうして、細分化すると、課題や解決策がよりはっきりと見えてくるメリットがあります。

 4桁のSIC(Standard Industrial Classification/米国標準産業分類)コード(約1200業種)は、日本を含めて世界で利用されています。ですから、世界中の企業情報を提供している会社のデータベースを利用すれば、業種別、企業ごとの課題を入手できます。このように業種別に対処すべき課題を明確にできれば、解決策が見えてくるのです。