得点源として期待していたブラジル人FWが突然、契約を解除し中東のクラブへ移籍――。

 こんな事態が今、Jリーグで相次いでいる。

 7月には名古屋のダヴィ(リーグ戦17試合出場・10ゴール)がカタールのウム・サラルへ、8月にはガンバ大阪のレアンドロ(21試合・11ゴール)が同国のアル・サッドに移籍した。また、FC東京のカボレにも中東のクラブが触手を伸ばしており、早ければ今月中にも移籍が決まるといわれている。

 こうした動きは今年に限ったことではない。07年はJリーグ得点王になったこともあるガンバ大阪のマグノ・アウベスがサウジアラビアのアル・イテハドへ、08年にはやはりガンバ大阪のバレーがUAEのアル・アハリにシーズン途中で移籍した。

 Jリーグのブラジル人選手が中東へ移籍する先例となったのは05年、浦和からカタールのアル・サッドに移ったエメルソンだ。

 00年、21歳の若さで来日したエメルソンはJ2札幌に入団。34試合で31ゴールというとてつもない活躍を見せ、J1昇格に貢献した。その後、川崎フロンターレを経て浦和へ。ここでもエメルソンはゴールを量産し、4シーズン目の04年には浦和を初のステージ優勝に導いた。抜群のスピードとゴール感覚を持ち、エメルソンにボールが渡るだけでスタジアムが沸く。エメルソンがいる間は浦和は王道を歩めるとさえいわれたものだ。

 ところが翌05年、エメルソンは不可解な行動に出る。リーグ戦中断期間に帰国したまま戻らず、中東に渡ってしまったのだ。この時からJリーグで活躍→中東クラブへ移籍という流れが生まれ、それが今、加速しているというわけだ。

かつては大枚はたいて
大物獲得に熱中した日本だが

 彼らが中東に渡るのは、いうまでもなく高額の年棒を提示されるからである。Jリーグの外国人選手の年俸は5~7千万円、高くても1億いくかどうかである。それに対して中東のクラブは3億前後の年俸を提示するらしい。プロなら自分をより高く買ってくれるところに行くのは当然のこと。選手は喜んで行く。

 だが、当てにしていた選手を突然失うクラブはたまったものではない。強奪ともいえる行為をなぜ黙って受け入れているのだろうか。