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「デジタルな日常」を生きる

デジタルな日常を
気配のように実現するアップル

松村太郎 [ジャーナリスト・著者]
【第19回】 2014年6月20日
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デジタルな日常へと
たたみかけるアップル

WWDC14で基調講演に立つアップルCEOのティム・クック氏

 アップルは6月2日から開催された開発者会議「WWDC14」で、スマートホームに関連するアプリ開発が行えるHomeKitと、健康管理や医療に関するアプリ開発とデータの安全な保管を行うHealthKitの2つを披露した。既に発表されてきた自動車とiPhoneを連携させることができる仕組みCarPlayと合わせて、一気に生活の身近なものとiPhoneを関わらせることができる仕組みを整えた格好だ。

 アップルのこのアプローチは、レクサスを自動運転に対応させたり、日本人には見慣れない冷暖房調節の器具「サーモスタット」を再発明したネストを買収しているグーグルとは全く違う。昨今のグーグルの様々なプロジェクトは、そのプロトタイプの完成度やデザイン性の高さからも、確実にデジタルな日常のパターン1、突き抜けるテクノロジーの未来を魅せてくれている。

 しかしアップルは違う。アップルは2007年1月に「携帯電話を再発明する」としてiPhoneを登場させ、現在も先進国ではトップシェアを保っている。当時は「最先端のテクノロジーとデザイン」とアピールしていたが、日本人から「確かに画面は大きいが、カメラも貧弱だし、テレビは観られないし、防水でもないじゃないか」との批判が上がっていた。

WWDC14で披露されたiPhone・iPad向け新OS、iOS 8で追加された主要な機能。HomeKitはスマートホームの制御が行えるAPI、HealthKitは健康や医療の情報の収集、安全な保管を行える。いずれも、多くの、主にデバイスやサービスを持っている企業との連携が目玉だ

 この批判は確かにその通りで、突き抜けるようなテクノロジーのすごさはなかったが、既存の概念を捨て去る意志決定とそれを包み込むデザインによって、間違いなく世界の携帯電話市場を塗り替え、スマートフォンに多くのことを任せる現在の我々のライフスタイルを作り上げた。そこには、テクノロジーだけの解決ではなく、携帯電話会社との交渉も大きな要素だったと言えるだろう。

 HomeKitやHealthKitは開発環境であるため、それそのものが何か突き抜けたテクノロジーになるわけではない。しかしiPhoneの時はアップルが個別の携帯電話会社と交渉していた「折り合い」を、これらの開発環境を用意することで解決してしまったようなものだ。

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松村太郎
[ジャーナリスト・著者]

まつむら・たろう/1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「スマートフォン新時代」「ソーシャルラーニング入門」など。

「デジタルな日常」を生きる

スマホ、SNSなど、毎日の暮らしに欠かすことのできなくなったネット環境とデジタルツール。その一方で、セキュリティやプライバシーの問題、ツールへの依存、ネットコミュニティとの関わり方など、日々新たな問題が現れ、状況は変化している。私たちは「デジタルな日常」をどう生きていけばいいのか、米国シリコンバレー在住の記者が、生活者の目線で解説する。

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