

アップルは6月2日から開催された開発者会議「WWDC14」で、スマートホームに関連するアプリ開発が行えるHomeKitと、健康管理や医療に関するアプリ開発とデータの安全な保管を行うHealthKitの2つを披露した。既に発表されてきた自動車とiPhoneを連携させることができる仕組みCarPlayと合わせて、一気に生活の身近なものとiPhoneを関わらせることができる仕組みを整えた格好だ。
アップルのこのアプローチは、レクサスを自動運転に対応させたり、日本人には見慣れない冷暖房調節の器具「サーモスタット」を再発明したネストを買収しているグーグルとは全く違う。昨今のグーグルの様々なプロジェクトは、そのプロトタイプの完成度やデザイン性の高さからも、確実にデジタルな日常のパターン1、突き抜けるテクノロジーの未来を魅せてくれている。
しかしアップルは違う。アップルは2007年1月に「携帯電話を再発明する」としてiPhoneを登場させ、現在も先進国ではトップシェアを保っている。当時は「最先端のテクノロジーとデザイン」とアピールしていたが、日本人から「確かに画面は大きいが、カメラも貧弱だし、テレビは観られないし、防水でもないじゃないか」との批判が上がっていた。
この批判は確かにその通りで、突き抜けるようなテクノロジーのすごさはなかったが、既存の概念を捨て去る意志決定とそれを包み込むデザインによって、間違いなく世界の携帯電話市場を塗り替え、スマートフォンに多くのことを任せる現在の我々のライフスタイルを作り上げた。そこには、テクノロジーだけの解決ではなく、携帯電話会社との交渉も大きな要素だったと言えるだろう。
HomeKitやHealthKitは開発環境であるため、それそのものが何か突き抜けたテクノロジーになるわけではない。しかしiPhoneの時はアップルが個別の携帯電話会社と交渉していた「折り合い」を、これらの開発環境を用意することで解決してしまったようなものだ。