さて、人は人のどの部分に最も目を向けるかといえば、間違いなく普段の表情です。顔がイキイキしていれば期待感が芽生えます。逆に、顔がどんよりと曇っていれば、その人の将来性までが暗く感じられ、あまり近づきたくないと感じます。

 したがって、好印象を与える顔というものを意識するようにしてください。たとえば、前向きな意思が感じられる表情、柔和で穏やかな表情、引き締まったシャープな表情など、魅力的な表情作りを意識しましょう。

 盲点なのが人と接していないときの表情です。せっかく人前では好印象を与えることができても、一人でいるときに暗い顔をしていては効果も半減です。

 そして、なんといっても、人と接するときは笑顔です。「そんなことくらいわかってるよ!」という人もいるかもしれませんが、本当に常に笑顔かどうか冷静に振り返ってみてください。疲れているときも笑顔で接しているか、眠たいときでも笑顔で接しているか、嫌いな人にも笑顔で接しているか、目下の人にも笑顔で接しているか、ということを自分で検証してみるのです。

印象アップ以外にもあった笑顔の効能

「作り笑いは、日本人の不気味さを表す象徴だと、欧米などでは言われているのでは?」と疑問を持つ人もいるでしょう。しかし、それはあくまでも「作り笑い」の話です。

 たしかに、いくら笑顔といっても、不自然な笑顔は不快感を与えることにもなりかねません。「女優の輝かしい笑顔は鏡の前で作られる」と聞いたことがありますが、女優ほどの笑顔でなくても、せめて不快感を与えない程度の笑顔を作る練習は、自宅の鏡に向かって行うのも一計です。

 こうした笑顔作戦を私がお勧めする理由は、印象以外にも得るものが大きいからです。『脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説』(前野隆司著、筑摩書房)という本に次のような興味深い文章があります。

「笑った顔をすると、そのときの筋肉の状態が感覚受容器から脳にフィードバックされ、こんな顔をしているときはうれしいはずだ、といううれしさの内部モデルが働く。その結果、「情」は、”「私」はいまうれしい”という心の状態を作り出すのだ。」

 この「笑顔を作ることで、脳内で嬉しい気分を示す反応が活性化される」という意味の指摘は、自己改革にもつながるとても重要なことです。つまり、笑顔は、心も笑顔にすることになるので、いつも明朗快活で積極的、そして見た目も好印象という前向きな姿勢を作り出す好循環の素になるということです。

声による印象アップは「おはようございます」から

 さて、笑顔と同じくらいに重要な印象要因がもうひとつあります。それは声です。声の笑顔と言い換えてもいいかもしれませんが、声のトーンを明るくすることです。そのためには、音程と音量が大事です。

 まず、音程ですが、ビジネスヴォイストレーニングスクール「ビジヴォ」の秋竹朋子代表によると、女性ならピアノ中央の鍵盤にある”ド”の音より2,3音ほど高くした”ミ”か”ファ”のあたりの音程が最も明るく聞こえるとのことです。同様に、男性なら同じ”ド”の1オクターブ下の”ド”より、2、3音低くした”ラ”か”ソ”のあたりとのことです。