人に合わせてしまうのは
責任を取りたくないから?

小林『嫌われる勇気』には、印象的な言葉がいろいろ出てくると思うのですが、なぜこの題名だったのでしょうか?

衝撃のアドラー心理学<br />小林麻耶が自分を嫌う意外な「目的」とは?古賀史健(こが・ふみたけ)
ライター/編集者。1973年福岡生まれ。1998年出版社勤務を経てフリーに。これまでに80冊以上の書籍で構成・ライティングを担当し、数多くのベストセラーを手掛ける。臨場感とリズム感あふれるインタビュー原稿にも定評があり、インタビュー集『16歳の教科書』シリーズは累計70万部を突破。20代の終わりに『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)に大きな感銘を受け、10年越しで『嫌われる勇気』の企画を実現。単著に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』がある。

古賀 もともとアドラー心理学が「勇気の心理学」と呼ばれていたので、「勇気」という言葉はタイトルで使いたいと思っていたんです。さらに読者にとって一番難しい勇気、書店で見たときにドキッとする勇気ってなんだろうと考えた末に、「嫌われる」というフレーズが頭に浮かんできました。現代は、FacebookやTwitterで少しでも不用意な発言をすると攻撃されてしまう時代です。「嫌われることについて、一般の読者の方たちも過敏になっている状況が広がっている」と思ったので、あえてこの題名を選びました。

小林 お二人はもう「嫌われる勇気」は完璧にお持ちなのですか?

岸見 嫌われるのがイヤだと感じることは今でもありますよ。できれば嫌われたくないとは思っています。けれど、嫌われることを恐れては駄目だと思いますし、そのように思えたのはアドラーのおかげです。あるとき、息子から「君はそんなに嫌われるのが怖いのか?」と聞かれたことがありました。なぜ憶えているかというと、当たっていたからですね。その頃から嫌われるということが僕の中で一つのキーワードになっています。

古賀 僕は先程も言ったとおり、転校生だったので「嫌われる勇気」については、昔からずっと考え続けているといった感じです。だからこそ、初めて岸見先生のご著書『アドラー心理学入門』を通してアドラーの思想に触れたとき、深く心に突き刺さる部分があったのかもしれません。

小林 転校の経験は、もちろん悪いことばかりではありませんよね。転校のおかげで新しい環境に慣れるスピードがとても速くなりました。アナウンサーの仕事ではインタビューなどで初めての方にお会いすることが多いのですが、転校の経験が生きています。一方で、相手に合わせて自分を作り出してしまう癖がついてしまったという問題はありますが……。

古賀 なるほど。

小林 だから、その癖は「転校が多かった」という過去が原因だとずっと思っていたんです。でも、『嫌われる勇気』を読んだら、「原因」は現在の「目的」を達成するために捏造されたものだと書かれている。なら私はどんな目的で相手に合わせてしまうのか。今の自分のままでいたほうが安全だから、自らの手で今の自分を選んでいると本では指摘されているけれど、なんの目的でそんなことをしているのかまったくわからないんです。