岸見 もう少し先を見なければいけないですね。なぜ人に合わせようとするのか。それには目的があるはずです。発想を逆にして「人に合わせないとなにが起こるか」を考えれば答えが見えてくるかもしれません。人に合わせなければどうなるんですか?
小林 嫌われる?
岸見 結果的にはそうかもしれませんが……。
小林 あと、相手から受け入れられない。
岸見 小林さんは受け入れられたいのですね?
小林 受け入れられたいです。
岸見 なぜですか?
小林 ひとりぼっちが嫌だから?
岸見 そうではなくて、人に合わせたほうが、きっと何らかのメリットがあるのですよ。
小林 えっ? なんだろう?
岸見 人に合わせれば自分で責任を取らなくていいのです。相手の責任にできるから。
小林 ああ、そうか。なるほど。
岸見 でも、合わせなければ自分のほうに責任が生じる。人に合わせている限りは、「自分は本当はそんなことしたくなかったんだ」という言い訳を、いくらでも言えますよね。
小林 言えます。そうですね……。
岸見 たとえばフランス料理を食べたいと思っていたけれど、友人が中華料理を食べたいと言ったとする。友人の意見に合わせれば、たとえ料理が美味しくなくても自分の責任ではありません。本来は嫌われようがなんだろうが自分がこの料理を食べたいと言うべきです。でも、そうしたくないから、人に合わせる癖がついてしまった可能性がある。
小林 私自身がそれを選んだということですか?
岸見 そうです。
小林 なるほど。私は青年と一緒で、実は自分のことが好きではないんです。でも、それも怖いからなのかなと今話していて思いました。自分のことを好きと言った時点で、すべて自分の責任を自分で取らなければいけなくなるから、自分を好きじゃないことにしているだけなのかもしれないと。