岸見 本著を手に取ったきっかけは、なんだったんですか?
哲学者。1956年京都生まれ、京都在住。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの「青年」のカウンセリングを行う。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。訳書にアルフレッド・アドラーの『個人心理学講義』『人はなぜ神経症になるのか』、著書に『アドラー心理学入門』など多数。古賀史健氏との共著『嫌われる勇気』では原案を担当。
小林 そんな折、書店でふと『嫌われる勇気』を見つけたんです。私は「嫌われる」ということに関して、幼い頃から悩んできました。というのも親が転勤族だったので、6回転校を経験しているんです。そのたびに早く仲間に入れてもらいたいがために、嫌われない自分を作り出そうとするのですが、なぜか嫌われる(笑)。転校生というだけで、転校初日に呼び出され「あなた、嫌いなんだけど」と、女子から嫌われてしまうということもありました。
古賀 僕の親も転勤族で、小学校だけで4つも変わりましたので、おっしゃることがよくわかります。どこにいても最初は外部の人で、ただそれだけで否定されてしまう。だから、自分がどういう風に立ち回ればいいのか考えるわけですよね。「あの小学校ではこんなキャラだったけど、こっちでは違う」なんてこともすごくあって。そのせいで本当の自分ってどんな人間なんだろうということを小さな頃からずっと考えるようになりました。
小林 一緒ですね! 私はその後、メディアに出ることで不特定多数の方々に見ていただくことが多くなり、嫌われる量もさらに多くなっていった気がします。嫌われることは怖かったですが、万人から好かれるのが不可能に近いことも理解できるようになりました。だから書店で本を見つけても、「嫌われる勇気でしょ。知ってるよ。私はもう持ってるもん!」と思っていました。でも、書店に行くたびに毎回毎回このタイトルが目に飛び込んでくるし、あまりに売れているので、これはなにかあると思ってようやく購入したんです。そうしたら、あれよあれよという間に読み進め、最後にはとても感動していました。
岸見 すぐに手にするよりも、そういう期間があってよかったのかもしれないですね。助走期間や準備期間があったからこそ、深く受け入れることができたのかもしれません。
小林 そうですね。哲人と青年の対話形式も読みやすく、私自身が青年になり切って哲人に問いかけることによって感情移入ができました。すごくわかりやすかったです。