逆玉狙いを止め、
チームラボを起業したきっかけ

長谷川 次にチームラボを起業した理由を教えてください。

猪子 ちょうど東大に入ったタイミングで、NHKのテレビ番組でインターネットを知りました。いわゆる情報社会という新しい社会が来て、どうも人類の三大革命に入るぐらい、大きい社会改革が起こると。これは逆玉を狙っている場合じゃない、古い社会に入っても滅ぶだけだから、新しい社会に入って、自分の力で社会に貢献しないといけないと感じました。

 日本の国際競争力を上げなければいけないと思っているのですが、その競争力の源泉というのは、テクノロジーと文化の2つだと思うんです。それなら、インターネットが行き渡ってデジタルという概念が広がった時に、何か生まれてくる文化みたいなものに貢献すれば、日本を変えていく何かに関われるのではないかと思ったのです。アートの分野なら、自分の小さい集団で貢献できると思ったので、デジタルだからこそできるような表現、デジタルだからこその新しい美を打ち出す集団を創ろうと。

 その新しい美によって、デジタルという概念の価値を上げる。本来、デジタルではなく物質的な物のほうが、かっこいいわけですよ。それが、デジタルでできた新しい物のほうが高級でかっこいいというようになれば面白いですね。ビジネスモデルはちょっと置いといて。

長谷川 僕から見てですが、猪子さんは周りに流されないで、ご自身を確立されているところがあると思います。世の中の流れを見ているのだけれども、でも、安易に流されたりしないというか。

猪子 それは、僕が本質的なものが好きで、社会の本質的な部分にかかわりたいと思っているからなんだと思います。誰かが新しいビジネスをシリコンバレーで始めたとか、ソーシャルゲームで儲かっているとか、そういう話にはあまり興味を持てないんですよね。

長谷川 周りに流されずに本質だけをずっと見続けるというのは一種の才能だなと思うのですが、子どもの頃からそういう部分はあったのでしょうか。

猪子 どうでしょうね、本質だとか真理だとかを考えるのは好きでした。「人間とは何か」みたいなことを考えていましたね。

日本の教育制度は
個人主義に過ぎる

長谷川 最後に、日本の教育はこれからどう変化したらいいと思いますか?

猪子 色々あると思いますが、現状は、個人主義に過ぎると思います。基本的に宿題もテストも受験も個人の能力のみを問いますよね。でも大人になってから大事なことは、チームでいかに成果を上げるかです。

 さっきのお化け屋敷の例でもそうですけど、みんなで一緒にひとつのことを作り上げていくこと=「共創」のほうが、個人を超越した面白いものが作れるし、そもそも「共創」の体験自体楽しいんですよ。そういうことを、我々チームラボとしては教育として、いろんな方に知ってもらえたらいいなと思っています。

長谷川 日本の教育制度が個人主義だ、というのは、とても面白い指摘ですね。示唆に富んだお話をありがとうございました。

次回はChange.org日本代表のハリス鈴木絵美さんにお話を伺う予定です。

(次回は8月27日更新予定です)