余談になるが、皮肉にも同じウクライナで2001年10月に地対空ミサイルによる旅客機撃墜事件が発生している。イスラエルからロシアに向けて飛行中のシベリア航空1812便が黒海上空で突如爆発し、墜落した。約1ヵ月前にアメリカで同時多発テロが発生していたため、墜落当初はテロの可能性も指摘されたが、今回のマレーシア航空機が撃墜された際よりも高い高度1万1000メートルを飛行中のシベリア航空機は、実際には近くのクリミア半島で軍事演習を行っていたウクライナ軍の発射した地対空ミサイルによって撃墜されたことが後に判明している。

 ウクライナ軍によるミサイルの誤射によって78人の乗員乗客が死亡し、ウクライナ政府はイスラエルとロシアに対し遺族への賠償金を支払うことで合意。その後、ブークを含む地対空ミサイルの演習を7年にわたって自粛している。意図的であれ、事故であれ、地対空ミサイルによって旅客機が撃墜される危険は、多くの地域で決してゼロではない話なのだ。

欧米は新たな対ロ経済制裁を画策
米議会ではヨーロッパへの批判も

 ロシアとの経済的な結びつきもあって、現在までヨーロッパの各国はウクライナ問題における対ロシア制裁に及び腰だ。マレーシア航空撃墜事件で少なくとも154人の犠牲者を出したオランダ国内では、親ロシア派勢力による遺体の扱いなどをめぐって、国民から批判が噴出している。彼らを支援しているとみられるプーチン政権に対して、制裁を求める声が日増しに高まっている。

 オランダのフォンティス応用科学大学で講師としてジャーナリズムを教えるハーメン・グロエンハルト氏が、親ロシア派勢力やロシアに対するオランダ国内の世論について説明する。

「現時点では撃墜されたマレーシア航空機に搭乗していた方々の遺体が、墜落現場周辺でどのような扱いを受けたのかを正確に知る術はない。しかし、オランダ国内のメディアは遺体の扱いに関して連日報道を続けており、親ロシア派勢力だけではなく地元民ですら、遺体に対してあまり敬意を払っていないような印象を受けた。遺体の搬送に関しても、親ロシア派勢力がもっと協力的な姿勢で臨めば、遺体が墜落現場の近くに何日も置き去りにされることはなかったはずだ」

「こういったニュースが連日伝えられているため、オランダ国内では親ロシア派勢力に対して怒りや嫌悪感といった感情を隠さない市民が少なくない。オランダの対ロシア外交にも大きな影響を与えるだろう」

 前出のザグレバ氏もロシアに対する経済制裁を強化すべきだと語る。アメリカ政界ではウクライナに対する軍事支援を強化し、経済制裁もさらに強化すべきと主張する議員もいるが、ロシアと正面きって武力衝突しようと考える国は現実的には存在しないだろう。

「より厳しい経済制裁をG7の主導で進めるべきだ。ウクライナへの軍事援助を増やしても、ウクライナ東部で発生しているような問題が根本的に解決するとは思えない。また、どういった形であれ、欧米がロシアに対して軍事行動を起こすとは考えにくい。一般のロシア人への影響を極力抑えるようにして、プーチン政権に近い企業や団体、個人に対して、外国との商業取引の禁止や海外の資産凍結、ビザの発給停止などをより厳しくして、経済的なダメージを与える方法が一番効果的ではないかと思う」