イェール大卒、元マッキンゼー勤務の<br />社会起業家を育てた家庭教育とは長谷川敦弥(はせがわ・あつみ)
株式会社LITALICO代表取締役。名古屋大学理学部を休学し、焼肉店店長やITベンチャー企業のインターンを経て卒業、2009年より現職。障害のある方を対象とする就労支援センターや発達に課題のある子どもも安心して通える幼児教室・学習塾を全国展開する。
LITALICO
http://litalico.co.jp/

長谷川 まさに優等生ですね。

ハリス 相当大きなエゴがあったんだと思います。「自分は普通の人よりできる」ということが自信の源になっているような。成績もAが並ぶのが好きだし、スポーツもとにかく勝つのが好き。今でもそういうところはあります。これって結構まずいなと思っていて、変わらないといけないと思っているんですが、なかなか変われませんね。

長谷川 負けず嫌い、という感じなんでしょうか。

ハリス 負けず嫌いというよりは、自分の中で「自分はちゃんとできているんだ」と思えることが重要なんです。成績もみんなに見せびらかすのではなくて、自分で満足できればいいという感じです。

趣味や夢中になるものを
見つけられない子どもだった

長谷川 成績や勝ち負けとは別に、自分の楽しみのための趣味は何かありましたか。

ハリス 趣味とか、夢中になるものとか、そういうものは極端に少なかったですね。外部の評価に結びつかないものはやっても続かない。「いい大学に入るのに役立つ」という観点で全ての生活を組み立てていたので、大学とは関係がない、楽しみのための趣味というのがなくて。

 テニスももちろん嫌いだったらやめていたんでしょうけど、結果を出してレジュメに書くためという目的があったから続きました。7年間ぐらいフラメンコをやっている私の友達がいるんですが、素敵だなとは思いつつ、私には絶対できないと思うんですよ。目的に結びつかないから。

長谷川徹底した目的志向ですね。

ハリス そう。大きな目的を日々の行動に落とし込むのが私の強みなんだと思います。いい大学に入るためには成績とレジュメがよければいい、そのためには勉強と部活をとことんやればいい、というように小さいころから考えていましたから。

 だから今のchange.orgの仕事は私に合っていると思う。署名キャンペーンって「ジンギスカンパーティー復活」のような明確な目的があるものなので、私の考えになじむんです。

やりたいことの決断を
先延ばしにできるコンサルに就職

長谷川 では大学に入ってからも目的志向は変わらず、就職先を意識していたのでしょうか。

ハリス そうですね。イェール大学に入学後、歌を歌いたかったのでアカペラサークルに入りました。最初のほうは騒いだりして楽しんでいたんですが、最終的にはサークルの中でリーダーシップを発揮して、わかりやすい結果を出して就職に役立てようという発想になるんですよ。ほかにも劇のプロデュースもやっていたんですが、同じように人を率いる役割になって、結果として4年生の時に学内施設の中で一番大きい劇場を満員にしてミュージカルを成功させたんです。

 ただそれが楽しいんですよ。やっていて楽しいんです。楽しくなかったら絶対続かない。外部から評価されることに楽しさを感じるのか、実際に自分の能力が活かされているから楽しいと思うのか、たぶん両方だと思うんですけど。

長谷川 大学卒業後は、コンサルティングファームのマッキンゼーに入ったんですよね。

ハリス そうです。私がいたときのイェール大学では、就職先はコンサルか金融しかないという空気が漂っていたんです。といっても金融はさすがに数学のクラスを一度もとってないし、あまり関心がないし、それなら人と向き合うコンサルの方が少しはマシかなと、あまり考えずに選びました。

 コンサルって2、3年で辞めるっていうのが前提だし、スキルをつけて履歴書を強化するにはいいところだし、お金も貯まるし、悪いことはほぼひとつもない。本当にやりたいことは何なのかっていう決断を延期するのがコンサルという職業なんですよね。

長谷川 あらゆる業界に関われますからね。

ハリス そう。「誰か私に仕事のやり方を教えて」と思っていたんでしょうね。ちなみに内定が出たのはマッキンゼーだけです。相性がよかったんだと思います。