「弱い者いじめの法則」では、「競争目標」と「攻撃目標」を区別する

 ランチェスターの法則は、数が多い側のときは「集団で戦い」、逆に数が少ない側であるほど「一対一で比較される」状況に持ち込むべきだと示唆しています。

 では、ビジネスにおいて自分より優位な相手と、弱い相手に挟まれているとき、どんな対応をすべきだとランチェスターの法則は示唆しているのでしょうか。

「ランチェスター法則を俗な言葉で表現すれば『市場占拠率拡大の法則は弱い者いじめの法則である』ということにほかならない。つまり、つねに弱者に集中攻撃をかけること。これがランチェスター法則の結論であるということにもなろう」(田岡信夫著『ランチェスター販売戦略1』より)

 この結論を元に、大きく二つのアドバイスを日本の研究者である田岡氏はしています。一つは、自社よりも上位にある企業を「競争目標」として定めながら、攻撃する相手は自社より下位の弱者にすべきだということです。つまり「競争目標」と「攻撃目標」を分離すべきだと同氏は指摘しています。

 その上でマーケティング上の「アイデア(創造力)」が必要な、例えばカタログやダイレクトメールのイメージなどは、「競争目標」である上位企業をどんどん真似る、優れた上位企業からアイデアを拝借するなどが好ましいとしています。クリエイティブの部分では、上位企業と肩を並べる必要があるのです。

 一方、マーケティング上の「ルール(法則)」に相当する地域販促の計画においては、常に「攻撃目標」である自社の下位企業をたたくためのプランを実行すべきです。

 地域戦略においては、弱い者いじめが最も効果があることが、ランチェスターの法則から明確にされています。冷徹なようですが、創造性で上位と張り合いながらも、必ず勝てる下位企業から顧客を奪うことが、占拠率の科学が教える勝利の定石なのです。

 ところが特定分野でトップの企業が、別業界に参入する場合など、担当者に妙なプライドとジェラシーがあるときは、後発の参入にもかかわらず、無謀にも上位企業と一騎打ちをするケースがあり、たいていは敗北に終わってしまうと田岡氏は述べています。

 数理モデルが支配する場所で、精神論で戦ってしまう人が日本には多すぎると同氏は触れていますが、太平洋戦争で日本軍が惨敗を喫した理由の一つは、数の理論を無視した無謀な兵力動員にあったことはよく知られている通りです。