マリウポリ市内のスポーツセンターで地元市民が参加して行われた訓練 Photo by Konstantin Chernichkin

 東部で続く親ロシア派民兵との戦闘でウクライナ政府軍や国民防衛軍が相次いで敗退し、ウクライナ軍は劣勢に立たされている。国連人権高等弁務官事務所は先月29日、ウクライナ東部で続く戦闘で、4月中旬以降に少なくとも2593人が死亡し、その半数近くが8月に集中していたと発表した。ロシア派民兵だけではなく、ウクライナ軍も市民に対する攻撃や人権侵害行為を行っていたと指摘している。

 現地では軍の指揮系統や、装備といった面で大きな問題があり、ウクライナ軍部隊がそれぞれの判断で行動していることへの批判も噴出している。

敗退が続くウクライナ軍
軍の脆弱性が浮き彫りに

機関銃の取り扱いをレクチャーする、国民防衛隊の兵士 Photo by Konstantin Chernichkin

 今から20年以上前の話になるが、ソ連崩壊直後のウクライナは約80万の兵力を誇り、約7000台の戦闘車両と1000機の戦闘機や攻撃機を保有する世界でも有数の軍事大国であった。しかし、1994年に発足したクチマ政権は軍事費の大幅な削減を実施。国防予算と人員は毎年減らされ、2012年の国防予算は人口が4分の1以下のギリシャを下回っていたほどだ。

 2013年10月に徴兵制度が廃止されたウクライナでは、決して待遇がいいとは言えない軍へ入隊志願者がほとんどおらず、今年3月に国防省が発表した兵力は約10万人。そのうち実戦に対応できるのは6000人ほどだった。そのため、ウクライナ政府は3月17日に国民防衛軍の創設を発表し、元兵士が中心となった約4万人の部隊が国土防衛の任務に就き、その多くが東部に派兵された。

 しかし、国民防衛軍の兵士は不十分な装備に加え、指揮系統が統一されない状態で戦地に送られており、ロシア側から継続して軍事援助を受けているとされる親ロシア派民兵の攻勢に圧倒されているのが現状だ。

 インターネット上では夏ごろから戦地で戦う兵士の装備を改善しようというキャンペーンが市民の呼びかけでスタートし、GPS機能の付いたカーナビから旧型の輸送機まで、さまざまな軍用品が市民から集められ、国民防衛軍の兵士らに渡された。

 また、携帯電話のSMS機能を使った募金活動ではすでに日本円にして100億円近くが集められ、国防省に寄付されたものの、使い道をめぐって政府内部で意見が分かれ、集められた寄付金は手付かずの状態だ。