「上に行くほど謙虚であれ」というフィロソフィー

エルベ NOBUの企業としてのスタイル、フィロソフィーは、こんなところに現れていると私は思います。たとえばNOBUドバイにノブさんが来たとき、彼はすぐにシェフジャケットに着替え、ホールスタッフに声をかけ、皿洗いのスタッフに「ありがとう」と言い、キッチンや寿司バーのスタッフと一緒に調理をします。

 私が育ったフランス料理の世界では、トップのシェフはレシピを書いて「これを作りなさい」と言うだけのことも多いのです。ノブさんのように一緒にキッチンに立ってくれるオーナーシェフほど皆のモチベーションを高めてくれる存在はありません。

ヒロ とくにフレンチの世界はシェフが独裁者みたいだよね(笑)。ノブさんがいつも言うのは、「ポジションが上がるほど謙虚になりなさい」ということです。そして「皆、ファミリーだ」ということも。「家族のように、スタッフ皆に平等に接しなさい」といつも言われます。ノブさん自身がスタッフ誰に対しても同じように接してくれます。

 NOBUのマネジメント面のフィロソフィーは「謙虚であれ、そしてスタッフ全員を平等に遇しなさい」だと言えます。NOBUにはあらゆる国からスタッフが集まっています。日本人、フランス人、アメリカ人、ドイツ人、韓国人などなど、国籍に関係なく皆平等に扱われ、NOBUブランドのもとで働くことに誇りをもっています。ただ給料をもらうために働いているという人がいないんです。

 今、僕はコーポレート・ディレクターという立場になって、かつてウエイターだった頃ノブさんにしてもらったようにスタッフたちに接したいと思ってやっています。残念ながら、数千人規模になった現在では全員の名前を覚えることはできませんが、ニューヨークでノブさんが数十人のスタッフ全員の名前を呼んでいた頃と同じスピリットは持ち続けていたい。

 ノブさんと一緒に各国のNOBUをまわっていますが、空港からホテルに行って荷物を置くとすぐにお店に行き、数日間の滞在中は目いっぱい仕事をして休むのは飛行機の中だけというタイトなスケジュールです。でも取材の合間などに少しでも時間ができると、ノブさんは「みんな、おいで。寿司の握り方を教えるよ」などと声をかけてスタッフにじかに教えてくれる。骨惜しみせず、100パーセント出し切ってくれる姿勢に、シェフたちも見習わなければと思うわけです。本当に尊敬できる「おやじさん」です。

<取材協力:NOBU TOKYO


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