損害賠償を請求するなら3年以内に

 買ったばかりの自動車に、いつの間にかキズがつけられていました。近所の人によると、評判の不良であるワルオ君がキズをつけていたといいます。

 民法724条では、不法行為によって受けた損害賠償の請求権は、被害と加害者を知ったときから3年で消滅時効にかかります。つまり、ワルオ君に損害賠償を請求するなら、「ワルオ君が犯人だ」と知ったときから3年のうちに行わなければなりません。

 また、民法724条は、たとえ被害や加害者を知らなくてもキズをつけられたときから20年経過したら請求できないとも規定しています。つまり、車にキズがつけられてから20年経過すれば、たとえ20年過ぎて「ワルオ君が犯人だ」とわかっても、もう損害賠償を請求できなくなるのです。この20年が「除斥期間」です。

 時効は、時効により利益を得る人が「時効を使います」(これを「援用」といいます)といって初めて成立します。しかし、除斥期間は、誰も何もいわなくても時の経過とともに権利が失われてしまうという特徴があります。それは、除斥期間が「誰かのため」の期間ではなく、時の経過が事実をわからなくするという出発点から設けられた期間であるからです。

(7)「第三者」

 これは当事者以外の者のことです。つまり、「善意の第三者」といえば、「事情を知らない当事者以外の者」ということになります。

(8)「信義誠実の原則(しんぎせいじつのげんそく)」

 お互いを裏切らない形で行動しなさいという原則のことです。一見、質屋やサラ金のさえないキャッチコピーのようなこの言葉は、「お互いを裏切らない形で行動しなさい」という原則のことを意味します。

 民法では、「権利も社会の利益と調和する範囲で認められます」とか、「権利は濫用してはいけません」という原則と並んで信義誠実の原則が規定されています。民法は1条で、「これから、一般の人どうしのルールをいろいろ規定していきますが、まず最初に、これだけのことは肝に銘じておきなさい」として、権利を使う場合の3つの指導原則を示しています。

(民法の3つの指導原則)
「権利も社会の利益と調和する範囲で認められます」
「権利は濫用してはいけません」
「お互いを裏切らない形で行動しなさい」

 なお、一般的な原則を説いている民法のこのような規定のことを「一般条項」と呼びます。普通、民法の規定というのは、もっと細かく具体的なものです。たとえば、未成年ができる行為はこれこれの行為だとか、未成年がすることができない行為を親などの同意を得ないでしたときには取り消すことができる、といったようにです。