日常とは違う意味で使われる、よく効く法律用語
次は「日常でも使われているけれど、法律用語として使う場合には意味が異なる用語」です。こうした用語は、同じ意味だと思って安易に使うと痛い目にあいます。早速見てみましょう。
(4)「善意」と「悪意」
ある事情を知らないことを「善意」といい、知っていることを「悪意」といいます。
大学に入ったときに、まず戸惑ったのが、この善意という用語です。「善意の第三者」といえば、目がキラキラした好青年を想像してしまいますが、そうではありません。道徳的な善いとか悪いとかいう価値判断を含んだ言葉ではないのです。
単にある事情を知らないことを法律では「善意」といいます。一方、ある事情を知っていることを「悪意」といいます。「善意無過失」といえば、事情を知らなくて、知らないことに過失がない状態を指します。
(5)「対抗する」
主張を通すことができることを「対抗する」といいます。日常用語では、争い、張り合うことを「対抗する」といいますが、法律用語では「主張を通すことができること」を意味します。
「不動産に関する物権の変動は、登記をしないと第三者に対抗することができない」という文章があったとします。この意味は、「不動産については、その権利を登記しておかないと、第三者に私が権利者だよと主張し通すことはできません」という意味になります。
(6)「時効」
時間が持つ法律的な効果のことを時効といいます。「時間が解決してくれる」などといいますが、法律は、ある事実が一定の長い期間続いたなら、その事実を重視して法律的な効果を与えます。これが「時効」と呼ばれるものです。
たとえば、一定の長い期間、権利者がその権利を使えるのに使わなかった場合には、その義務を果たさなければならない相手方は、「もう義務を果たさなくてもいいのだな」と思うはずです。また、本当にその権利があったことさえ、辿れなくなることもあるでしょう。そこで、権利者の権利をいつまでも認めるよりも、一定の長い期間にわたって権利が使われなかったという事実を重視して、その権利を消滅させることとしました。これが「消滅時効」です。
時効といえば、多くの人はこの消滅時効を思い浮かべると思いますが、一定の長い期間が経過することで権利を手に入れる「取得時効」というものもあります。これもまた忘れてはいけません。
時効に似たものに「除斥期間(じょせききかん)」というものがあります。これも「一定の時間が経てば、権利関係がわからなくなってしまうので、その権利関係はなかったこととする」期間のことです。