「社内コンプライアンス確立等の観点から」とか「業界の再編等の動きに対応して」など、ビジネス文書で多用される「等」。
なぜ多用されるかといえば、「等」を入れておくことで生じる「あいまいさ」に安心を感じるからだろう。
でも法律の世界ではそんな「なんとなく安心」は通用しない。
「等」を使うなら、必ず「『~等』とは『○○』と『××』と『△△』です」と具体的に列挙できなければならないのが法律のルールだからだ。
今回は、あなたの文書の論理性と説得力を格段にアップさせる「等」の使い方を法律に学ぶ!
法律の「等」には厳密なルールがある
ビジネスに限らず、文章を書いていると「等」という言葉を使うことがよくあります。たとえば、「社内コンプライアンスの確立等の観点から」とか「業界の再編等の動きに対応して」など、「等」を入れるとなんとなく落ち着く感じがして、ついつい「等」を連発してしまいます。
実は、「等」を使いこなすことは、いちばん伝えたいことを正確に伝えるために必要なスキルなのです。「等」を効果的に使いこなすことができれば、論理的で説得力のある文章を書くことができます。
「餃子なんか注文しようか?」
「篠田麻里子なんかかわいいと思うんだけれど」
このような「なんか言葉」を最近よく耳にしませんか? 「餃子が食べたい」、「篠田麻里子さんのことが大好き」といえばいいのですが、いかにも他に選択肢があるような感じで(この「感じで」も「なんか言葉」の仲間です)「なんか」を使っています。「餃子が好きでない人がいるかもしれないから……」とか「篠田麻里子さんが大好きとストレートにいうのが少し恥ずかしいから……」、そんな気持ちから「なんか言葉」を使うのでしょう。
その感覚のまま、ビジネス上の文章でも、ついつい「等」を入れてしまいがちです。「社内コンプライアンス確立等の観点から」とか「業界の再編等の動きに対応して」など、注意してみると意外に「等」が多用されている文章は多いものです。
「社内コンプライアンス確立の観点から」というよりも、「~確立等の観点から」としたほうが、なんとなく安心です。そのため、何か想定外のことが起こったときの「余地」のつもりで「等」を入れるのでしょうが、法律の世界ではそんな「なんとなく安心」は通用しません。
法律の世界では、「何が当てはまるかを想定した上で『等』を使う」というルールが徹底しています。法律の条文で「等」を使う場合、必ず「『~等』とは『○○』と『××』と『△△』です」、と具体的に列挙できなければなりません。法律を運用するときに、なんでもかんでも「等」に含められてしまってはいくらでも拡大解釈されてしまって大変だからです。