裁判官の身分保障と国民審査
さて、統治の仕組みも「人権保障の仕組み」として働くことはすでにお話しました。
ここのところ、司法権が存在感を見せています。「国会がだらしない」といえばそこまでですが、非嫡出子(正式な結婚関係から生まれた子でない子)の相続分を嫡出子(正式な結婚関係から生まれた子)の半分とした民法の規定を違憲としたり、1票の格差があまりにも広がった選挙を違憲とする判決(予定)など、新聞の1面を飾る判決が続いています。
裁判所がこうした違憲立法審査権を行使するのは、誤った法律などの効力を失わせることで人権の侵害を防ごうというものです。裁判所は人権保障の最後の砦なのです。
紹介した違憲判決でいえば、非嫡出子だけ法定相続分が少ないことに合理的な説明ができれば「差別」ではありません。しかし、合理的に説明できなければ、それは「差別」となります。差別されてきた者は「法の下の平等」という憲法が保障した権利を侵害されてきたといえます。
今回の判決は「子自らが選択や修正する余地のない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されない」として合理的な根拠は失われていると判断しています。1票の格差の問題も同様にこの「法の下の平等」が問題となりました。
近頃、頼もしい司法ですが、その独立に関しては次のような規定が憲法に置かれています。
第76条 1・2 略
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
第78条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
第79条 1~5 略
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
第80条 1 略
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
もし、司法の独立が守られていなかったら
もし、司法の独立が守られていなかったらどうでしょう。任命する内閣などのいいなりになるかもしれません。「憲法や法律というよりも政府の方を向いている」なんてこともあるでしょう。政府の意向に従わない判決を書く裁判官は辞めさせられてしまうかもしれませんし、給料を下げられてしまうかもしれません。さらには、わけ知り顔に先輩裁判官が寄ってきて「君のためにいうのだけど、原告を勝たせるのはどうかと思うよ」なんてへんてこなアドバイスをすることも考えられます。