村野 これからはリソースを分散させて局地戦をしても勝つことはできないと考え、リソースを統合し、力を結集する方向に再編する道を選んだわけです。

 現状分析を行い、あるべき姿を描き、そこへアプローチしていく過程を、大手コンサルティング・ファームの協力を得て進めることになりました。その結果、競合他社との比較検討を迅速に行い、自分たちが考えていることを視覚化し、そして営業、マーケティングの基本方針、アプローチを16項目にまとめあげることができました。当時は「ソニーウェイ」と呼んでいましたが、今でも十分に通用するセオリー、手法を構築することができたと思います。それだけのものを導き出せたという意味では、コンサルティング・ファームと仕事をした成果としては評価に値するでしょう。

改革の実行段階まで
コンサルはコミットしてくれない

並木 その一方で、不満な点はありませんでしたか?

村野 問題は、その後ですね。戦略を描き終わると、コンサルタントの方は徐々に現場を離れ、ソニーの従業員に改革を実行に移すプロセスが引き継がれていくわけですが、そこで何が起こったかと言えば、元に戻ろうとする力が湧き起こってきたんです。コンサルタントの方がいなくなり少し時間がたった頃、商品の責任を担う事業部は「自分たちのカテゴリーにとってはこうした方が最適なんだ」と主張し始め、各国の販売会社も「自由にやらせてくれれば結果を出せる」と言い始めた。また個別最適ですね。

 このような反動はある程度想定の範囲内だったのですが、ちょうど会社のトップも変わり、慎重に対応したいとコンサルティング・ファームに対応策を相談したところ、また新しい見積もりの話になりました。コンサルティングに保証書はないんですか、と言いたい気持ちでしたね。

並木 村野さんとしては、きちんと結果が出るまで一緒に歩んでほしかった。

村野 結果をどう定義するかですよね。改革の成功を結果とするのか、改革提案そのものが結果なのか。だいたいの場合は改革提案で終わって、改革を実行しきるところまでは含まれていないのが現実です。もちろんフィーの問題もありますが、大きな改革にあたっては、3年以上という長期的なスパンで最後までやりきる設計にして、コンサルティング・ファームにも責任をもってコミットしてもらうことが大事だと思います。