時に数十億円ものフィーを要するコンサルティング・ファームとのプロジェクト。多大なコストに見合った成果を得るためには、企業側はどんな点に注意しなければならないのだろうか。ソニー時代から、コンサルティング・ファームと数々のプロジェクトを経験してきた村野一氏(現リコーイメージング株式会社常務執行役員)に、発注者として心得るべきポイントを聞いた。(構成:日比野恭三)
並木 村野さんはソニーに勤務していた頃から、コンサルティング・ファームと仕事をする機会は多かったそうですね。
村野 2003年に、メキシコで現地販売会社の経営にあたっていた時が最初だったと記憶しています。前任者から引き継いで、まず会議を開いたんですが、時間通りにスタッフが集まらない。しかも悪びれる様子もなくて……。これは意識改革が必要だと感じて、マネージャーとオスサイト会議で徹底的に話した上で、「経営品質賞」を獲ることを社の目標の一つに据えることにしました。会社の目標やそれを実現する戦略は私なりのアイディアがありましたが、具体的なプロセスとしてどうすれば賞を獲れるのかは分からない部分も多かったので、この分野に特化したコンサルティング・ファームの助けを借りることにしたんです。
並木 その結果は……?
村野 プロジェクトの開始から4年目に、日本企業としては初めて経営品質賞をいただくことができました。その道のプロにみっちり付き合っていただき、時間を守れないレベルからメキシコの大統領府で、大統領から表彰されるような優良企業にまで変わることが出来ました。
このプロジェクトは成功だったと思っています。
並木 その後、帰国して本社に戻られるわけですが、当時のソニーは改革の必要性に迫られていましたよね。
村野 その通りです。そうした状況の中で、私は大きく分けると3つ、コンサルティング・ファームと一緒に改革にチャレンジするという経験をしました。
最も大規模だったのは、コンシューマ・エレクトロニクスの営業、マーケティング全域を対象とした改革です。これは10年に一度と言ってもいいほどの規模でしたが、私はそのヘッドに就いて改革を推し進めることになりました。
ソニーは、卓越した商品企画力があり、各国に販売力のある優秀な営業部隊がいて、その2つが両輪となって急成長を遂げてきました。しかし、台頭してきた韓国勢や中国勢に押されるようになっていた。彼らは思い切った中央集権型のリソース配分を選択して市場を席巻していました。
並木 ソニーとしても、戦い方を見直さざるを得なかった。