お客様の満足度は「上達」の度合いに比例する
川上:今、通販番組などで商品が気に入らなければ返金に応じる「30日間返金保証制度」などをよく見かけますよね。
星野:あれは、返金保証が売り上げ目的になっているセールスキャンペーンです。ハートの論文や私が思う返金保証は、社員に対してインパクトを与えるものです。企業側の返金保証を導入するときの意図が決定的に違いますね。
川上:アルツ磐梯では、2004年からスキー・スノーボードのスクールで「上達保証制度」もスタートさせています。お客様が「あらかじめ約束したレベルに達しなかった」と感じたら受講料を全額返金できるサービスですが、この制度を導入したのはなぜですか。
星野:これもカレーの「全額返金保証制度」同様に、サービス産業が何であるかを従業員に分かってもらうためのものです。
スキー場でも、やっぱり従業員はお客様に意識が向いていなかった。それが市場調査で「なぜ、お客様はリフト代を払っているのですか?」という質問をしたとき浮き彫りになりました。大半の従業員が「お客様を下から上へ運ぶため」と答えるのに対し、お客様の多くは「上から下に滑るため(に上まで運んでもらう)」と答えたのです。このぐらい正反対なんです。
川上:つまりお客様は、スキーを滑るために来ている。
星野:そう。それも、上達するために来ている。つまり、お客様の満足度は「上達」に比例しているのです。ということは、リフト代を払ったお客様に私たちが提供できるのは、上手になって帰ってもらうこと。だから「上達保証制度」を導入しました。