導入して3日で社員の意識が変わった
川上:「全額返金保証制度」を導入したとき、社員の反対に遭ったそうですね。
星野:大半のスタッフが猛反対ですよ(笑)。お金がない学生もたくさん遊びに来るから、本当はおいしくても「おいしくない」と言う人もいるのでは……という意見が圧倒的でした。「1000円のカレーを3万人が返金したら……。え……!?」と青ざめる社員もいましたね(笑)。
川上:実際、どうでしたか?
星野:初日に1組のお客様が返金を要求されたんです。このとき、スタッフが「差し支えなければ、どこがおいしくなかったか教えていただけないでしょうか」と尋ねたら、「ごはんがベタベタだったから」と感想を述べてくれたんです。
川上:その人たちはウソをついたわけではなく、本当においしくないと感じたのですね。
星野:そうです。スタッフはどうしたと思いますか? なんと、3日間で炊飯器を買い換えたんです。3日ですよ? 普通ね、こういう経営判断は現場レベルではしません。炊飯器が壊れたならともかく、まだ使える状態で買い換えようとしたら上司に伝え、稟議書を作成し、予算を組んで……など然るべき手順を踏まないといけません。それを一気に省いてでも買い換えを強行したのはなぜだと思いますか?
川上:このままいけば、炊飯器代以上の損失が出ることが明らかだから……?
星野:そうです。つまり現場の全員が「炊飯器を換える以外の選択肢がない」ことがはっきり分かった。これこそが全額返金保証のパワーです。カレーの返金保証を通して、お客様に対するサービスとは何かが明確になり、それを全員で共有できるようになったのです。
現在、毎冬訪れる20万人のうち、3人に1人はカレーを頼みます。アルツ磐梯を代表するメニューになりました。返金率は、ここ数年1~2件ほどです。