しかし筆者の頭の中は、この表を見た時点で「?」だらけだ。冬季の光熱費需要が、寒冷地と温暖な地域で、これほど「違わない」ということがあるだろうか? たとえば年間収入第1・五分位を見ると、VI区(概ね南関東以南の比較的温暖な地域)で5117円であるのに対し、I区(北海道・青森県・秋田県)で1万0436円、II区(岩手県・山形県・新潟県)で9657円。I区にあたる地域で冬を生き延びるに必要な光熱費が約1万円? 現在の価格であれば概ね灯油90リットル? 「それで足りるわけがないのでは?」というのが正直なところだ。それに、冷え込んでもせいぜい最低気温はマイナス2℃程度の東京都と、冷え込めば最低気温がマイナス20℃以下にもなる北海道との差が、1ヵ月あたりたった5000円? 灯油で、たった45リットル程度の違い? これは納得しがたい。

 さらに見ていくと、他にも不思議な点がいろいろと目に入る。

 たとえば第1・十分位では、「I区(9991円)よりII区(1万0673円)の方が光熱費が高い」という傾向がある。他の所得層では見られない傾向だ。もしかすると、II区に在住している低所得層特有の居住環境があり、その影響で光熱費を多く必要としているのかもしれない。「北海道の住宅は寒冷に対する配慮を行って建設されているが、東北にはそうではない住宅が多いため屋内は北海道よりも寒い」という話はよく耳にする。

 またII区では、第1・五分位(9657円)が、より世帯収入の少ない第1・十分位(1万0673円)よりも、より世帯収入の多い第1~3・五分位(1万0836円)も低い。同様の傾向はIV区(石川県・福井県)でも見られる。

 これらを除くと、概ね

「温暖な地域ほど冬季の光熱費の増大は少ない」
 「収入が増えるほど冬季の光熱費支出も増える」

 という傾向が見られる。だから「納得」して、「現在の冬季加算は高すぎるんだな」と考えてしまう方も多いだろう。

 でも、この比較は何かがおかしい。寒冷地と温暖な地域の比較で差がなさすぎることといい、容易に理由が思い当たらない謎の傾向が見られることといい。意図的に結果をねじ曲げた統計でなかったとしても、データの偏り・不足などの問題が隠れているのではないだろうか? この点については、委員たちからも「サンプルサイズは十分か」「根拠付けを行えるだけの信頼性は出せるか」という懸念が表明された。部会長である駒村氏も、事務局に対して、冬季加算を都道府県単位ではなく市町村単位で見直す可能性について尋ねた。事務局は「都道府県に限定するものではない」と答えた。

 少なくとも

「生活保護世帯および漏給層のデータを収集し、市町村単位で月別に見る」
 「生活保護基準以下の生活をしていると考えられる層の影響を除外した比較を行う」

 といった検討が行われなければ、現在の「冬季の光熱費の増加」を評価することは不可能であろう。冬季加算が実際に高すぎるのかどうかは、それらが判明してからはじめて検討可能になるはずである。