いま、日本に「新型インフルエンザ」襲来の危機が迫っているという。新型インフルエンザ――それは“鳥インフルエンザウイルス”がヒト型に変異したもの。「H5N1型」という強毒性の新型ウイルスだ。このウイルスが大流行すれば、未曾有の世界的大惨事となり、おびただしい数の死者はもちろん、経済・社会機能がマヒする可能性が高いという。その危機に対し、感染症の専門家である岡田晴恵氏は警鐘を鳴らす。
~【緊急特集】 第2回~
前回(第1回)述べた第2の戦略(健康被害を最小限にとどめる)に関して、大流行による健康被害を減らすための様々な手段が検討されているが、ここでは2つの例を記しておきたい。
新型インフルエンザ対策には、大きく2つの潮流がある。スイス式と米国式である。
スイスでは
全国民分のワクチンを備蓄
スイスでは、国家新型インフルエンザ準備計画に基づいて、2007年現在、国民全員分のタミフルとH5N1型ワクチン(現在流行中の鳥型ウイルスを使ったプレパンデミック・ワクチン=備蓄ワクチン)を備蓄している。
海外でのH5N1型ウイルスの流行状況と人への感染報告、ウイルスの変異などの状況から判断して、いざとなれば国民全員に備蓄ワクチンを接種する。英国でも同様の対策計画が動いている。これによって国民全体に基礎免疫をつけ、感染者を減らすとともに、流行の拡大を遅らせ、ピークを平坦化することが期待されている。さらに発症した場合にはタミフルで早期治療を施す計画である。感染患者の同時多発と重症化が大幅に抑えられれば、第3の目標達成も容易となろう。
市民の行動規制まで
対策を講ずるアメリカ
これに対して、米国では、社会機能維持者に対するプレパンデミック・ワクチンの備蓄とは別枠で、新型インフルエンザの発生後半年以内に、全国民に対してパンデミック・ワクチン(新型インフルエンザウイルスを用いて新たに製造するワクチン)を接種する計画である。財務省のホームページにも公表されているように、そのために、膨大な国家予算を投入して、必要なワクチン製造施設の建設、製造メーカーの誘致が行われている。カナダでも4ヵ月以内に全国民にパンデミック・ワクチンを接種する対策が動いている。