ロシア経済に取り深刻な痛手だろうが、致命的な打撃にはなりそうにない。経済制裁は受ける側の国民にとっては外国からの圧力、嫌がらせと受け取られ、むしろ団結の効果をもたらした例が多い。アメリカの経済制裁はキューバのカストロ政権、イランのホメイニ政権などを倒すことができなかった。

 ロシア人は第2次世界大戦中ドイツ軍に包囲されたレニングラードだけでも70万人の餓死者を出して頑張りぬいた国民だ。いまでは小麦の自給率は137%、肉類と魚の生産量は1人1日238gに当たるし、原油自給率は198%だから生活に困ることはない。果物、バター、チーズは輸入が多いが、必要なら国産しそうだ。そもそも外貨準備が昨年11月で4180億ドル余、中国、日本に続く第3位でアメリカの6倍に近い。GDPは2000年から2012年の間に7.8倍も拡大したから、少々減っても国家の存立には関わるまい。

 ロシア人から見れば、歴史的領土でロシア人が圧倒的多数のクリミアの「本土復帰」は当然で、東ウクライナのロシア人同胞をウクライナ政府の圧迫から救うことは「正義」と感じるから、プーチン氏への支持は経済制裁後も80%を超えている。ロシアが経済制裁に屈するとは考えにくい状況だ。

(4)尖閣問題は鎮静化するのか?

 昨年11月10日の安倍・習近平会談で日中両国は東シナ海での緊張状態に関し「双方が異なる見解を有している」ことを認めて、尖閣諸島問題を事実上「棚上げ」あるいは「現状維持」にし「戦略的互恵関係」を発展させることで合意した。

 その陰には米国の強い働きかけがあった。米国にとっては中国との経済関係が決定的に重要であるから、もし尖閣諸島周辺で日中の軍事的衝突が起きても、外国の無人島のために中国と戦争することは馬鹿げている。だがもし日中の武力紛争を米国が傍観すれば日米同盟は終了し、日本の基地は使えなくなり、他の同盟国の信頼も失うから、何としてでも日中に和解させる必要があった。

 日中首脳会談が実現して一応和解になり、尖閣問題は元の形に戻ったが、双方の巡視船などによる睨み合いは「異なる見解」の表明であり「現状」の一部でもあるから当分続くだろう、だが「互恵関係」が進展すれば徐々に下火になるのではないか。

 今年のこの問題の焦点は合意文書にもある「対話と協議で情勢の悪化を防ぎ、危機管理メカニズムを構築する」ことをどこまで具体的に進めうるか、だ。2012年6月以来中断していた日中の海上警備当局間のホットライン開設などの協議も1月12日から始まった。海上、空中での哨戒・監視活動は公海上では自由だが、たがいに礼儀正しく行い、衝突などの事故や挑発を避けるための取り決めなど、細部の協議は外交官よりも双方の海軍、空軍将校の出番だ。その中で日中の軍人の間に相互の信頼、友好感覚が育てば、安全保障上の効果は大きいだろう。