心疾患のリスクといえば、高血圧。高血圧のリスクといえば、塩分。
2015年版の日本人の食事摂取基準では、18歳以上の男性の食塩摂取目標量は1日につき8グラム未満、女性は7グラム未満とされている。改定前の10年版では、男性9グラム未満、女性7.5グラム未満だったから、より低く変更されたわけだ。
ところが近年、塩よりも「糖」の方が心臓に悪いのでは? という研究報告が相次いでいる。
昨年末にBMJ発行のオンライン誌に掲載された糖分と心疾患に関連する調査研究をレビューした記事によると、1日の摂取カロリーの25%以上を糖分で取ると、10%未満の人より心疾患発症リスクが3倍になるという。特にお菓子やジュースなど、「追加の糖分」が1日の摂取カロリーの10%未満と10~24%では後者の心疾患死リスクが30%上昇する。
清涼飲料水の甘味成分として使われている「果糖」が元凶のようで、果糖の摂取量が1日74グラム以上では、高血圧(140/90mmHg)と診断されるリスクが30%上昇し、もともと高めの人では、160/100mmHg以上になるリスクが77%も上昇する。
血圧160/100mmHgが恒常的に続き、1カ月間の食事・運動療法で140/90mmHgに改善しない場合、降圧剤のお世話になるのは必至。これに喫煙歴や脂質代謝異常(高コレステロールや高中性脂肪)、肥満、メタボのいずれかが1、2個重なれば、問答無用で心疾患のハイリスク群の仲間入りである。
塩分の過剰摂取リスクは、一般常識になりつつあるが、糖分、果糖についてはどうだろう。
WHO(世界保健機関)は、昨年春に1日の糖分摂取量は総カロリー数の5%未満に抑えるよう、呼びかけている。成人男性だと1日量は25グラム未満。一般的な缶コーヒーの糖分含有量は100ミリリットル当たり、7.5グラム。190ミリリットルの缶コーヒーなら1本で約15グラムは摂取する計算だ。まして、炭酸飲料類なら……。
米国では「白い結晶の悪魔」は塩か砂糖か、ということで論争中。今のところ砂糖の旗色が悪い。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)