日本の失業率は、2009年6月に5.4%を記録して、なお上昇中である。今年中に過去最悪の5.5%を超えることは、不可避と考えられる。雇用問題は、現在の日本経済が抱える最も深刻で、最も緊急な対応が必要とされる課題だ。
では、失業はどのような雇用者について生じているのだろうか? これについて知ることは、問題の性質を明らかにするために、重要だ。
現在の日本では、5472万人の雇用者のうち、正規雇用者が3386万人で約3分の2を占め、非正規の雇用者が1699万人で約3分の1となっている(総務省の雇用形態別雇用者数データより)。
最近の雇用者数の変化を見ると、08年4~6月期に比べて、雇用者総数が104万人減少して、1年前の98.1%の水準になった。その内訳は、正規雇用者が63万人の減で98.2%、非正規雇用者が33万人の減で98.1%だ。非正規雇用者の減少率がやや高いとはいえ、正規雇用者の減少率との差はさほど大きくはない。つまり、一般に考えられているように非正規雇用者に偏るかたちで雇用整理が行なわれているわけではなく、正規雇用者もほぼ同じ比率で整理されていると言うことができる。
正規雇用者の身分を確保している人が、「失業問題は非正規雇用者の問題」と考えて対岸の火事視するとすれば、問題の深刻さを大きく見誤っていることになる。失業問題は、日本人すべてが等しく直面している問題なのである。
より長期的に見ると、日本の雇用者は、非正規雇用者を中心として増加してきた。正規雇用者数は、80年代の中頃に3300万人程度であったが、90年代に増加し、90年代の中頃には3800万人程度となった。しかし、90年代後半から減少を始め、最近では3300万人程度と、80年代中頃とほぼ同水準に戻っている。
これに対して非正規雇用者は、80年代の中頃には600万人程度であったが、傾向的に増加し、90年代の中頃には1000万人を超えた。そして03年には約1500万人となり、08年には1700万人を超え1800万人に近づいた。つまり、90年代の中頃以降の日本の雇用者の増加は、ほぼ非正規雇用者の増加によって実現してきたのである(【図表1】参照)。
【図表1】正規雇用者数と非正規雇用者数の推移 |
資料:総務省「労働力調査」 |