小笠原群島の植物の2割は固有種。
ムニンノボタン、ムニンツツジ、ムニンミドリシダ……

 小笠原群島は日本でも有数の固有種の生息地です。維管束植物(シダ・裸子・被子)688種のうち、150種が固有種であり、21.8%にのぼります。特に人が居住しない兄島では固有種比率は41.3%にも達します。

 でも、その多くが絶滅に瀕しています。2003年の報告書によれば、

・ムニンミドリシダ(シダ目メシダ科):母島の固有種。分布は○○○付近に限られる。個体数は現在のところ比較的多く、○○○の○○○内に群生している。近時、分布地付近の○○○に見物客が増え、その通り道に当たる群落が踏まれて失われつつある。(○○○は植物保護のため伏字。以下同じ)

ムニンノボタン@東京大学大学院付属植物園

・ムニンノボタン(フトモモ目ノボタン科):1968年の小笠原返還直後の状況では3株程度が知られるだけであった。1979年の東京都立大学調査では、開花する成木は○○○にあった1個体のみであった。その直後にこの木の主幹は何者かに切られたが、かえってそのために根元から萌芽を生じ、またその頃に日当りがよくなったこともあって、旺盛に生育し今日に至っている。このまま放置すれば絶滅は時間の問題と考えられ、1983年から後述の人工増殖とその現地還元が進められてきた(*4)

・ムニンツツジ (ツツジ目ツツジ科):戦前から父島○○○の○○○付近に特産する小数の個体が知られていた。返還以降の調査でもこの個体群の存在は確認され、しばらくの間は3株が健在であったが、その後次々に枯死して現在ではただ1株が生存して開花している。この親株を元に人工増殖が試みられ、その還元も○○○を中心に進められている。

 ここでも固有種の命名法が面白い感じです。多くの固有種の和名に「ムニン」と付くのです。

 この「ムニン」っていったいなんでしょうか? 

小笠原だけの「うぐいす砂」は、
希少岩石ボニナイトの産物

 小笠原群島の父島には、緑色の「うぐいす砂」に覆われた海岸が点在します。

YASUOKAの日記感じたこと
小笠原植物誌

 地質学的には、古銅輝石(こどうきせき)と呼ばれるもので、父島を覆う希少岩石であるボニナイト(Boninite)に多く含まれます。古銅輝石は堅いので、ボニナイトが波に洗われ砕かれるうちに、それだけが残るのだそうです。

 ボニナイトの希少性は突出しており、世界でボニナイトが大規模に良好な状態で観察できるのは、父島と聟島に限られます(母島にはない)。

 これを最初に発見・観察・報告したのは東京大学の菊池安博士でした。通常、火山岩に多く含まれるはずの斜長石がまったく含まれないという、異様な火山岩の発見でした。1888年に日本語で紹介され、1889年には詳細な英語論文が提出されました。でもあまりに異様すぎて、学界では無視されました。

 でもドイツ人科学者Petersenがこの異常な鉱石をBoninit(独)と名付け(1891)、それが英語読みされてBoninite(ボニナイト:ボニン島の岩石)となりました。その直後、菊池博士の論文の存在が確認され、その功績が認められたのです。

*4 2001年5月に父島東部海岸の上部で60余株の群生が発見された。