さて、更なるチャレンジを求めて入社したものの、BCGに入社した当時の私は、まさに箸にも棒にもかからない新人アソシエイト。本当にヤバかったです。何しろパワーポイントなんて使ったこともない。エクセルはただのマス目だと思っていて、計算機を叩いた数字を手入力していた位ですから……。

 最初に入ったプロジェクトで、プロジェクトリーダーに「これを回帰分析して」と言われて、「回帰分析」の意味が分からず調べたり、人に聞いたり。100枚位のプレゼンテーション資料の中に、私の作ったスライドは1枚もない。昼も夜も机の前で唸っていても、空回りするばかり。同期ははじめからおそろしく優秀だし、後から入った同い年の同僚が先に昇進してゆく。そんな日々が続いていました。

 その頃、当時BCGの日本代表を務められていた堀紘一さんが、新しい会社(現ドリームインキュベーター)を設立するために退職されることになりました。堀さんの送別会の折、残る社員(特に新しく入った社員)にいただいたメッセージは、今でも頭に焼きついています。

 「君たちに贈る言葉は3つある。1.逃げるな! 2.クライアントファースト 3.ヒトの経験を糧にしろ」

 私は何度もこの言葉に助けられ、支えられてきました。「逃げるな」という言葉は、最初の半年間位は毎晩のように自分に言い聞かせていましたし、「クライアントファースト」という言葉で、何よりも「誰のせいにもしない」という自責の精神を叩き込みました。どれだけ頑張ったのだとしても、お客様に喜んでいただけなければダメだ、ということ。客商売の基本中の基本ですね。

 そして「ヒトの経験を糧にしろ」。これには一番助けられました。限られた人生の時間の中で、全ての経験をすることは不可能です。であるなら、いかに多くのヒトと接し、話し、その人の経験や知見をレバレッジ(テコ)として活かせるかによって、仕事も人生もより豊かになる、ということだと解釈しています。

 これは座学やそもそも活字を読むことが苦手な一方、人と接したり人のハナシを聞いたりするのが大好きで、議論を通じて進化するタイプの自分にとっては本当に救いでした。その後、調べ物や独考で価値を出すのではなく、インタビューや議論で価値を出す方向に自分の動き方を変えてみたところ、パフォーマンスが劇的に改善しました。更にそれが自信に繋がり、自信が柔軟な発想や気づきを生み、好循環に繋がっていきました。この言葉は自分の得意分野に気づき、それを活かし、伸ばしていくきっかけを与えてくれたのです。

 ここで重要なのは、このメッセージの内容もさることながら、私がこのメッセージを今でも一語一句覚えている、という事実です。私が当時25歳でなくもっと年を取っていたら、または入社間もないタイミングでなければ、覚えていなかったのではないでしょうか。藁にもすがる思いで、先輩の言うことは何でも取り込もうと、アンテナの感度がビンビンだったタイミングだからこそ、一語一句覚えているのだと思います。