「ナンバー4やナンバー3のように、人と話をするのが苦手なタイプは昔からいました。しかし、そうした人々を思いやる力が、今の職場には欠けているようです。また、他人に興味が持てず、自分の殻にひきこもるタイプがとくに20代、30代を中心に増えている。『あっしには関わりのねえことでござんす』と世間に背中を向けた一匹狼『木枯らし紋次郎』は、当時、いかす男の象徴でしたが、今はどこを見てもそんな人ばかり。人間同士の絆が弱まり、個人が孤立している現代の職場。人の心の荒廃が、うつの急増という形で表れているのではないでしょうか」(武藤氏)

「関係言葉」で
雑談力をアップさせる

 では、雑談力を上げるためには、どうすればよいのか。

 武藤氏は「会話の中に“関係言葉”を入れるとよい」と話す。関係言葉とは、人間関係を潤滑するための言葉。あいさつや感謝の気持ち、相手を気遣う気持ちなどを表現し、その場の空気を和ませるための言葉だ。これに対し、事実を伝える言葉が「事実言葉」。仕事の連絡内容、指示内容などがこれにあたる。「今は、職場の会話がほとんど事実言葉だけで成り立っています。関係言葉を上手に入れるスキルを学んでほしい」。

 たとえば、こんな具合だ。

■事実言葉だけの場合:
「おまえの報告書、間違っているぞ。もう一度確認して出しなおせ」
   ↓
■関係言葉を挟むと…:
「ちょっといいかい?例の報告書だけど、早めに出してくれてありがとうな。でも、一つだけ直してほしいところがあるんだ。すまないけど、確認してくれるかい?頼むよ」

■事実言葉だけの場合:
「課長、来週オレ有休をとらせてもらいます」
   ↓
■関係言葉を挟むと…:
「課長、営業でA社を落としたそうですね。おめでとうございます。ところで先週は海外にいらしたんですって?いいなあ。そうそう、オレ、実家に帰らないといけないんです。祖母が倒れちゃって…来週、有休をとっていいでしょうか?」

 「とかくスピードを要求される時代に、そんなまどろっこしい会話ができるか」と思う向きもあるかもしれないが、忙しい職場ほど会話には時間をかけるべきだ。業務に追われれば追われるほど、コミュニケーション不足から人の真意が汲み取れず、誤解や憶測を抱きがち。ちょっとしたことで「非難された」「無視された」と感じるようになる。

 部下をうつにしないために、自分がうつにならないために、まずは大阪のおばちゃんの「雑談力」にならうべきなのかもしれない。


【今回のポイント】 マイナスの感情も受け止めよう

ナンバー3のように、マイナスの感情を人前で出すのが苦手な人もいる。だが人間、不満や怒り、悲しみなどがあって当たり前。いつも穏やかで楽しげな表情を浮かべている必要はない。無理やり感情を押し殺していると、ほんとうに喜怒哀楽が希薄になってしまう。ときには「陰口になるから」などとためらわず、仲間やパートナーなど親しい人に本当の気持ちを聞いてもらうとよい。 

参考:「誰とでも無理なく話せる雑談力」(明日香出版社 武藤清栄 監修 東京メンタルヘルスアカデミー・フレンドスペース著)
東京メンタルヘルスアカデミー http://www.tmaweb.net/