「なんだかダラダラしちゃって。昔は元気でハキハキした子どもだったんですが、最近はとにかくダラダラしてます。生きる力がどんどん失われているように思えるんです」

 彼は大手電機メーカーに勤める営業マン。長い間不況で苦しんだが、デジタル家電ブームで会社の業績が少し上向き、仕事にも張りが出てきた。ダラダラしているという息子は中学3年生。娘は小学6年生。妻は専業主婦。

やる気のない息子と
向き合えない親たち

 中学2年の秋頃から息子の生活が乱れてきたようだ。といっても非行に走るわけではない。勉強をしなくなったが、スポーツや音楽に打ち込むわけでもない。放課後友だち数人でダラダラと繁華街をうろつき、自宅ではダラダラとテレビゲームをやり、夕食後はテレビを見ながら携帯メール。マンガ以外の本を読んでいるところを見たこともない。最近はマンガすら読んでいない。学校の成績も急降下を続けている。

 「無理だと思いながら、つい勉強しろと叱ってしまうんです。でも、面倒臭そうな顔をするだけでなんの反応もない。反発でもしてくれたらいいのに、なんだか糠に釘のような状態です」

 担任の教師に相談もしてみたが、最近、そういう子どもが増えてるんですよと、他人事のように言われただけで、何の解決にもならなかった。

 「どうすればいいんでしょう? 僕は仕事が忙しくて息子ときちんと話す機会もないし、妻は娘の中学受験にかかりっきりで、息子にあまり話しかけていなくて、今ではほとんど無視してます。まあ、今の息子を見れば、積極的に関わることができないのを責めることもできませんが」

 父親も母親も、息子に対してほとんど関わることができない状態だ。

読書をしない子は
親が原因?

 最近の日本の若者がダラダラしている問題は、非常に根が深い問題だ。この問題を語りはじめると、それこそ、戦後教育の問題、戦後民主主義の問題、言い訳が何でもまかり通る社会風土の問題、傷つくことばかり上手になった日本人の心根の問題、日本的な妬み嫉みの文化など、広範で複雑な論議になってしまうが、相談者の彼にとって重要なのは、戦後60年の総括ではなく自分の息子の現在のことである。