この違いは何だろう? よく観てみると、そのハウスは雪が降ることを想定し、毎年秋に新しいビニールにしていました。なおかつ、2棟に1棟ずつハウスのビニールを剥いで、畑を休ませながら落ちた雪の行き場をつくっていたのです。

 雪対策の違いで、大きな投資をしなくてもハウスをつぶさずにすんだわけです。

 つまり、大雪はそのときに起きた現象ですが、ハウスがつぶれた真の原因ではなかったのです。私たちのハウスの8割が倒壊したのは、1メートル50センチの積雪があったことではなく、そのような雪が降っても耐えられる構造にしていなかったことや、事前の準備ができていなかったことにあることを、そのハウスから知ることができました。

 この教訓から、次に建てるハウスは限られた予算の中でどんな風雪があってもつぶれないしなやかな構造にすることにしました。

 以前は1メートルの積雪でもつぶれない強固なブレス(筋交い)を入れたのですが、それと同じように1メートル50センチの積雪でつぶれない強固なものにするのは、コストがかかりすぎるのであきらめました。

 そこで、雪が降るときや風が吹くときには、簡単に天井のビニールをはがせる構造にしたのです。そうすることで一時的に収穫ができず不安定になりますが、出荷できない時期が半年も続くようなことはなくなります。

 さらにこの方法にすると、私たちの技術不足で今までうまくいかなかったことが改善されるようになります。

 今まで私たちの農場では、夏場の気温上昇への対応がうまくできてなかったのですが、この方法にすることで、夏場も涼しい環境でホウレンソウを栽培することができるようになるのです。

 農業ではさまざまな天候の影響を受け、それが被害の原因になりますが、経営上それを天候のせいだけにしてしまっては、次の改善策が生まれません。その天候の変化を受け止めて、どう対応していくかが成功へのカギになるのです。