最近の株価を見ると、日経平均が毎日数パーセント上下するような荒っぽい動きが続いている。こういうときに何を考えるべきかと言えば、株価の絶対水準だ。特に株価の利益に対する水準でまずは考えるといい。最終的には、会社の持つ資産が生む利益によって、資産価値自体が評価されるわけだから、会社の利益の力で株価を評価することは理にかなっている。
仮にファンドの解約売りや、海外の株価下落などによって、株価が過剰に下がるような局面があるならば、絶対的に安ければ買えばいいということだ。
とはいえ、ここ数週間の株価と企業収益の動きを追うと、眼下の状況下での株式投資の難しさが分かる。
たとえば、先々週末の10月31日の日経平均株価の終値は8576円98銭(前日比452円78銭安)だった。ところが、その後乱高下を続けて、先週末の11月8日には前日比316円14銭安の8583円ちょうどで引けた。結局、1週間ドタバタした揚句、あまり変わらない水準に落ち着いたのである。
では、この株価(日経平均)が高いのか安いのかを、筆者がいつも用いている手法で計算してみよう。まず10月31日の終値を11月1日時点の今期予想PER(日経予想ベース)の12.24倍で割ると、一株利益は700円73銭。益利回りは約8.17%だ。長期国債利回り(1.48%)と比べると、益利回りが約6.69%勝っている。
筆者は、益利回りと利益成長率の代理変数として名目GDP 成長率の予想を足し合わせたものを株式投資の期待リターンと見、これが長期国債利回りにどれくらい勝っているかを、「リスクプレミアム」と見て、株価の高低を判断する目処にしている。6%だと普通、5%だと株価は高い。7%だと株価は安い、というのが大体の判断基準だ。
今年度の名目GDP成長率の政府見通しは0.3%だが、7月に下方改定されたものなので、今回は、名目ゼロ成長を想定した。GDPは今後大きくマイナスに転じる可能性もあるので、その点は注意を要するが、この時点でのPERからみると、株価は下限のレンジを破っていないまでも、相当割安だと言えたことが分かる。
ところが、これが1週間立って、11月7日になると、PERは14.56倍に跳ね上がる。一株利益は約700円から589円49銭に16%弱減少する。益利回りは6.87%。その時点の長期国債利回り(1.51%)を引くと、リスクプレミアムは5.36%となる。株価のレンジの上を破っていることはないが、同じ8500円でも、11月8日の8500円は標準と考える株価よりも安くない。利益が16%も減っては仕方がない。