宇宙の謎の瞬き
「高速電波バースト(FRB)」

 直径64mの豪パークス電波望遠鏡は、南半球第2位の口径を誇ります。人類が持つ、宇宙の深淵を見つめる眼のひとつです。

「答え」を内と外、どちらに求めますか?photo by www.sxc.hu

 2007年、過去の観測データを処理していたチームが特異な「発光」現象を見つけます。後に「高速電波バースト Fast Radio Burst」と呼ばれる、瞬間的な電波の瞬き(*4)でした。

 ・特定の波長で見たとき、その瞬きは数mm秒しか続かない
 ・しかし発光全体では、高周波から低周波まで1秒近くにわたって輝いている

 もしこれが可視光線のように見えたとすれば、「青から赤まで急激に色を変える1秒間の星」というようなものでしょう。

 問題はこの後者でした。もし宇宙のある一点から同時に放たれた光だったとすれば、周波数によって地球に届く時間が変わっていた(*5(低周波は高周波より1秒も遅れた)わけで、それは通常、これほどの大きな遅れ(1秒)とはなりません。

これほどの遅れとなるには、その光が、宇宙を長く長く旅せねばそうならないのです。おそらくは50億年ほども。こんな遠くで、超短時間だけ、しかも1回限りの大発光現象をどうやったら起こせるのか、誰にもわかりませんでした。

 以来、パークス電波望遠鏡で10個、プエルトリコのアレシボ電波望遠鏡(*6)で1個のFRBが観測、報告されています。

 巨大電波望遠鏡だからこそ、この超遠方からの光が捉えられます。でもそれ故に、その電波望遠鏡がカバーする範囲(視界)は、非常に限られた狭いものになります。

 狭いところしか見ていないのに、これだけの発光が観測されたわけです。ということは、もし全天を同時に観測できたなら、どれほどの瞬きが見られることでしょう。

 その数1日に1万、と推定されています。10秒に1回、全天のどこかに見えるのです。この急激に色を変える1秒間の発光が。

 いったいそれは、どんな風景なのでしょうか?

*4 光は電磁波であり、周波数の高いγ線、X線から、ヒトの眼に見える可視光線、周波数の低い赤外線、電波、からなる。つまり電波は、眼では見えないが光の一種。
*5 分散度(dispersion measure)という。
*6 単独では世界一の大きさ。谷を埋めてつくられたその電波望遠鏡は、なんと直径305m!