分かりやすい資料を整え、予行演習も重ねて臨んだ大事なプレゼン。なのに目の前の相手は無表情……。みなさんもこんな経験ないでしょうか。原因と対策を考えてみます。

相手の共感が不可欠

 プレゼンは、ビジネスにおける大きな山場。プレゼンのデキ次第で、商談がうまく行くかどうかが決まると言っていいでしょう。
 でも、気合が入れば入るほど、こちらが一方的にしゃべってしまうもの。そこに実は問題があるのです。
 プレゼンもコミュニケーションのひとつです。相手の納得や同意をもらうため、まず共感を引き出すことが不可欠なのです。
 自分が一方的に話し続けるのではなく、相手の共感を引き出すフレーズやアクションを合間にはさむことで、「なんだか親しい感じがするな」「話を聞いてあげてもいいな」と思ってもらう。
 具体的にどんなふうにやればいいか、私が使っている例をご紹介します。

相手との心理的な距離を縮める

 プレゼンに限らず、初対面であったりあまりよく知らない間柄だったりする場合、お互い「お手並み拝見」といった感じになりがちです。
 そんな時、私はこちらから相手との心理的な距離を縮めるフレーズやアクションを積極的に使います。

「○○さん、それでは始めさせていただきます」
「ここまでよろしいでしょうか、○○さん」

→ 発言の冒頭や終わりで、繰り返し相手の名前を呼びます。名前を呼ぶというのは、親近感を相手へ伝える最も簡単で絶大な効果がある方法です。

「ご説明に入る前にもう一度、確認したいのですが、今回、お問い合わせいただいたきっかけは、~という課題を解決したいということでよろしかったでしょうか?」
→ お互いのスタート地点が共通であることを確認するとともに、疑問形を使うことで相手にいったん話の主導権を渡します。

「この点については、どう思われますか?」
「こういう理解でよろしいでしょうか?」

→ プレゼンの途中で適宜、相手の感想や意見を聞いてみることで、一緒に考えてもらうよう促します。

出席者の目を見る
→ 複数の出席者がいるプレゼンだと、ひとりひとりの顔をあまりはっきり見ないで話す場合も多いものですが、ここぞというときは相手の心に飛び込むつもりで、出席者の目を順に、きちんと見て話します。

話がはずみそうなツールを持参する
→ プレゼンに関連したグッズや手づくりの模型などを持参すると、場が一気に盛り上がったりするものです。

プレゼンは完璧! なのに相手は無表情……<br />いったい何が悪かった?

谷本有香(たにもと・ゆか)
経済キャスター/ジャーナリスト/コメンテーター
大学卒業後、山一證券に入社、社内の経済キャスターに抜擢されるが、会社が自主廃業となり、フリーランスキャスターの道に。フリーの世界で仕事をさせて頂 くために、試行錯誤しながら見出したのがこの「アクティブ リスニング」。この技術に出合ってからは、十数年にわたって経済キャスターの第一線で活動し、日経CNBCでは初めての女性コメンテーターに抜擢される。 トニー・ブレア元英首相、マイケル・サンデル ハーバード大教授、著名投資家のジム・ロジャーズ氏などの独占インタビューをはじめ、世界のVIPへのインタビューは1000名を超える。 Bloomberg TV、日経CNBCなどを経て、現在はフリーで国内外の著名人インタビューや、金融・経済セミナーのモデレーター、Huffington Post、TABI LABO等でコラムなどを手掛ける。また、テレビ朝日『サンデースクランブル』ゲストコメンテーターとして不定期出演中。2015年4月から、日経 CNBC『夜エクスプレス』アンカー