出光興産社長・石油連盟会長 天坊昭彦(撮影/ミヤジ シンゴ) |
よく、「歴史は繰り返す」と言いますが、まったく同じことを同じ状況で繰り返しているのではありません。それが起きた時代の変化や技術の進歩などにより、異なるものです。1つとして、同じものはありません。
しかし、事の本質については変わらないので、それを見つけることが歴史に学ぶということだと思います。
たとえば、過去には「バブル経済とその崩壊」という現象は、何度も繰り返されてきました。現在、大きな問題に発展しそうな米国発世界同時金融危機も、現象面では同じようなものと言えます。
本来なら、おカネの取引だけでよかったはずのものが、紙キレのやり取りになってしまいました。「なぜ、そのようなことが起きたのか?」について、歴史に学ぶことで、事の本質である「過剰流動性が発生すれば価値が下がる」という当たり前の経済原則が読み取れます。
それを理解していれば、オロオロする必要はないし、流されることもありません。
1980年代の日本でのバブル経済の崩壊から学べることは、「世の中全体で右肩上がりの経済成長が永遠に続くことはありえない」ということでしょう。私は、当時から、そう考えて「このままでは大変なことになるぞ」と警鐘を鳴らしていましたが、社内では誰も信じてくれませんでした。
過去の歴史に学べば、ゼロサム・ゲームというものは、市場にニューカマーがいるあいだは誰も困りませんが、誰かが退き始めた場合には、どんどん元の状態に戻っていくということがわかるはずです。この点を理解していれば、歴史の中から「どこかの時点でツブれる」という原理・原則を読み取ることができるでしょう。