2015年4月1日から施行された生活困窮者自立支援法のポイントの一つは、「伴走型支援」だ。多様な困難や問題を抱えた人々に対し、その人に適した支援を行いつづけるかたわら、支援者が「伴走」するというものだ。

しかし現実を見ると、民間有志による懸命の支援にもかかわらず、シングルマザーたちは“生活保護を受けている”というスティグマに苦しめられ続けている。

生活保護シングルマザーを
苦しめるスティグマ

「幸せになってはいけない」<br />生活保護シングルマザーを苦しめる罪悪感生活保護を受けているシングルマザーたちは、受給することが「権利」にもかかわらず、「申し訳ない」と思っている人が少なくない

「このごろ、『生きる』とは何なのか、考えさせられるんです。私、人間は幸せになるために生まれてくるんだと思います。その追求をするのが、福祉の役割です。でも、その福祉で苦しむ人たちがたくさんいます。『幸せになってはいけない』と思い込まされて……何なんでしょうか? この世の中は?」

 こう語るのは、「大阪子どもの貧困アクショングループ(CPAO)」代表として、子どもの貧困問題に取り組む徳丸ゆき子氏だ。子どもの貧困は、すなわち親の貧困である。CPAOは、最も「しんどい」貧困状況に陥りやすいシングルマザーと子どもたちを主な対象として、親・子ども・周囲の大人を「まるごと」支える活動を展開している。

 子どもに対しては、「待ったなし」で、すぐにサポートを開始することが必要だ。そのためには、母親と子どもを同時に公共または民間のセーフティネットにつなぎ、生活を安定させなくてはならない。数多くの困難を抱えた母子の場合には、生活を安定させる手段が、生活保護以外にないことも少なくない。

「でも生活保護を受けているお母さんたちは、とても慎ましく、申し訳ながっているんです。たとえば、ファミレスで少しごちそうすると『おいしいもの食べちゃいけないと思う、生活保護だから』と」(徳丸さん)

 どういうことなのだろうか?

「そのお母さんたち、『幸せだと思うのは申し訳ない』と思っているんです。そこまで思いつめているんです。『いいじゃないの』と言って、一緒に食べてもらうんですけど」(徳丸さん)

 生活保護だから、生活保護らしく。「恥ずかしい」と思うべき、スティグマ(烙印)を感じるべき。そういうプレッシャーは、私の接してきた生活保護利用者のほとんどが感じている。時に「働いたら損」「税金でラクする賢い選択をした自分」といった露悪的な言葉を口にする人々も、少し立ち入った会話をすると、強い自責の念や恥の意識やスティグマ感を持っており、その裏返しとして露悪的な言葉を口にしている場合が多い。

「でも、福祉スティグマは、日本だけにだけあるわけではないんです。欧米にも、公的扶助に対するスティグマはあります。でも、内容と程度が全く違うんです」(徳丸さん)