なぜ肝心なときに失敗してしまうのか、なぜ幸せを自ら崩壊させてしまうのか……。あなたには、そんな傾向はないだろうか? 実はこれらはすべて思い込みからなる「人生脚本」のせいだと語るのは、『人生の99%は思い込み』の著者である心理学者の鈴木敏昭。前回、人生脚本を推し進めるものとして、「人生ゲーム」の存在があるということを明らかにした。その人生ゲームをより深く理解するには、「裏のメッセージ」について知る必要がある――
人生ゲームに影響を与える
言葉に隠された裏のメッセージ
人生ゲームには、言葉とは裏腹の「裏のメッセージ」がある。この裏のメッセージが、ゲームを動かす上で重要な役割を果たしている。
裏のメッセージとは、表の言葉の裏に隠れた本当のメッセージということだ。ゲームは、この裏のメッセージを送ったときから、また、それを受け取って相手が反応したときから始まる。
例えば、下記のような例が挙げられる。
(1)嫁と姑の会話
姑「仕事がしんどいんじゃない? 体こわさないでね」
嫁「どうもご心配いただいてありがとうございます。大丈夫ですから」
◆裏のメッセージ:
姑「仕事を辞めて、家庭のことに専念したらいいのに」
嫁「あなたの言いなりになんかなるものですか」
嫁は姑のメッセージに裏があると感じ、そこに皮肉が込められていると受け取った。嫁が感じたのは「姑は自分を家庭を維持する手段と考えており、自分の人生のことなど本気で心配するはずがない」という思いだ。だから皮肉っぽく返答しているのだ。
(2)看護師と患者の会話
患者「痛みが治まらない! なんとかして!」
看護師「もう少し我慢して下さい」
◆裏のメッセージ
患者「もっと世話するのがあんたの仕事だろ!」
看護師「忙しいのに、いちいち呼ばないで!」
裏のメッセージを見ると、患者には相手のあら探しをして、自分のOKを確認するゲームを仕掛けているようだ。看護師側には「同情集め」や「責任転嫁」のためのゲームを仕掛けているように見える。
(3)親と子の会話
親「うるさく言うのはお前のためだからだよ」
子「わかってるよ。うるさいな」
◆裏のメッセージ
親「親の言う通りにすればいいんだ」
子「自分のことは自分で決める。親の操り人形じゃんないんだ」
家庭の中の親子関係にもさまざまな問題が見られる。とくに管理主義や無関心な親と思春期の子どもの間ではバトルが繰り広げられる。この裏のメッセージから、親は「あなたのため」という仮面をかぶった「他者支配」のゲームが見られる。一方で、子どもの様子からは「責任転嫁」や「追い詰め」のゲームが見られる。
(4)上司と部下の会話
上司「また休暇とるのかね?」
部下「何か問題あるでしょうか?」
◆裏のメッセージ
上司「この忙しいときに、仕事を優先しろ」
部下「権利を行使して何が悪いのか」
(5)同僚どうしの会話
同僚1「部長と仲がいいみたいじゃない」
同僚2「別にただ同じ趣味なだけだよ」
◆裏のメッセージ
同僚1「ゴマすってるんじゃないの?」
同僚2「あんたにそんなこと言われたくないね」
会社の同僚どうしにも、競争・妬み・攻撃などによるめんどくさい人間関係が見られる。同僚1の皮肉には一種の「あら探し」ゲームが見られる。それは妬みによる非難・攻撃と考えられる。
このように、人はときに裏のメッセージを使って相手をゲームに誘い出し、報酬を受け取ろうとすることがある。ゲームを仕掛けることで、「自分はOKで相手はNGである」などの構えを確認するのだ。もちろんすべての会話に裏のメッセージがあるわけではない。
ただ、人はこうした裏のメッセージを使ったゲームをときに仕掛けがちだ、ということは知っておくといいだろう。
次回は、知らず知らずのうちにあなたが仕掛けているゲームについて紹介していく。