蒸し暑い季節の到来である。全国清涼飲料工業会の調べによると、国内の清涼飲料水の生産量は2013年に過去最高の2000万キロリットルに達し、一人当たりの消費量は年間160リットルに迫る勢いらしい。
暑さと疲労で渇いた身体には、炭酸飲料の刺激と甘みがありがたい。しかし、何事もホドホドが肝心だ。実際、各国の調査報告からは、甘い炭酸飲料を好む人は、現体重にかかわらず2型糖尿病の発症率が高いと判明している。
それでは、どうするかだが、英国ケンブリッジ大学の研究チームから実にシンプルな提案が出されている。曰く「1日に1杯(1本)は、水や無糖のお茶/コーヒーに置き換えること」。
研究チームは、英国の成人2万5639人の1週間の食事歴を調査した後、約10年間の追跡調査を行った。その際、砂糖入り飲料と人工甘味料入りの飲料、そして水、フルーツジュースと、2型糖尿病発症との関連を調べている。
追跡期間中、847人が2型糖尿病を発症した。背景を分析した結果、砂糖入り飲料の摂取量が多いほど発症リスクが増加。1日1杯当たり22%も上昇することが分かった。一方、水やフルーツジュースではリスク変動は認められなかった。
ちなみに、甘みを人工甘味料に置き換えたダイエット飲料でも発症リスクは上昇したが、明確に危険因子とするほどではなかった。
さて、同研究のポイントは、甘い飲み物を1日に1杯(1本)だけでも水や無糖のお茶/コーヒーに置き換えるだけで、2型糖尿病の発症リスクが14~25%も減らせる可能性が示唆されたこと。ダイエット飲料への置き換えでは、明確な恩恵は認められていない。
米国飲料協会は、即座にこの研究結果に対し異議を表明。今後、各国の栄養摂取基準への記載を巡って攻防が繰り広げられそうだ。
各団体の思惑はさておき、飲料の糖分やカロリーが健康管理やダイエットの「盲点」なのは確か。
幸い日本では、身体に良いと証明された緑茶が手軽に飲める。今年の夏はダイエット飲料の代わりに無糖の冷たいお茶をどうぞ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)