悪口を言うことで、相手をカメラに写し出す
3)悪口を言うことで、相手をカメラに写し出す
有吉さんをはじめ、「使われ続ける」芸人さんたちは、場を俯瞰する力に長けています。
誰が今話せていないか、今の話の中で足りない部分はどこか、どんな話を投入すれば、場が盛り上がるのかを経験値によって知っています。
それをすることで、全体のバランスが保たれ、番組全体がうまくまとまることをわかっているのです。
そのために、有吉さんは、たとえば、番組内で元気のない芸人さんや、発言していない人の悪口をいうことで、その人自身がフィーチャーされ、カメラに大きく写し出されるように仕向けて、バランスさせるようとしているのです。
決して自己のためでなく、人のためにする。
そして、人と助け合いながら物事を作り出すという気持ちを忘れないでいるのです。
4)スタッフ受けがいい
何かの番組で見たことがあるのですが、ADさんやヘアメイクさんなど、番組を支えるスタッフさんが芸人さんたちに対してどのような感情を抱いているかをアンケート集計したというものがありましたが、有吉さんのスタッフからの信頼度や好感度は、芸人さんたちの中でも断トツで高かったと記憶しています。
どんな人に対しても、相手に不快感を与えない、もっといえば、相手に気持ちよく自分に対峙してもらう、そのことを心がけているからこそ、皆が有吉さんのために積極的に協力し、結果、有吉さんご本人も自身の力を発揮しやすくなりますし、そして、番組全体としても、スタッフ皆の力が集結された結果、最高のクオリティに仕上がるのでしょう。
自分の周りの人たちに気持ちよく働いてもらうような圧倒的な「巻き込み力」を持っている人、それが有吉さんなのです。
5)言葉のチョイスを知っている
しゃべる職業の人にとって、「言葉」は当然武器にもなり、凶器にもなります。
特に毒舌を売りにしている人にとっては、それらの言葉は、人を鋭利に傷つけるものになりがちです。
しかし、有吉さんの言葉は真実をついていながらも、人に嫌悪感を抱かせるいやらしさがありません。
人は、その時の立ち位置によって、相手を祀り上げるような言葉を放ったり、また人間以下のもののような言葉を向けたりと、自分の立ち位置との比較で言葉を選んでしまうことがあるようです。
しかし、有吉さんは違います。上からも、そして、下からも目線を向けず、ニュートラルな立ち位置で相手への言葉を選択しています。それは後輩に対しても、大御所に対しても同じです。
恐らく、それは、有吉さんは自身が絶頂からどん底に突き落とされた経験の中で培った感覚なのだと思うのです。
末長く、信頼される人としての「言葉」を選ぶ。
これが、長く「使われ続ける」コツの一つになるのです。
次回以降も、活躍する「アクティブ リスナー」の方々をご紹介します!
谷本有香(たにもと・ゆか)
経済キャスター/ジャーナリスト/コメンテーター
大学卒業後、山一證券に入社、社内の経済キャスターに抜擢されるが、会社が自主廃業となり、フリーランスキャスターの道に。フリーの世界で仕事をさせて頂 くために、試行錯誤しながら見出したのがこの「アクティブ リスニング」。この技術に出合ってからは、十数年にわたって経済キャスターの第一線で活動し、日経CNBCでは初めての女性コメンテーターに抜擢される。 トニー・ブレア元英首相、マイケル・サンデル ハーバード大教授、著名投資家のジム・ロジャーズ氏などの独占インタビューをはじめ、世界のVIPへのインタビューは1000名を超える。 Bloomberg TV、日経CNBCなどを経て、現在はフリーで国内外の著名人インタビューや、金融・経済セミナーのモデレーター、Huffington Post、TABI LABO等でコラムなどを手掛ける。また、テレビ朝日『サンデースクランブル』ゲストコメンテーターとして不定期出演中。2015年4月から、日経 CNBC『夜エクスプレス』アンカー