日曜朝の「酒場学習論」

 社会活動を「やらなければならないからやる」とか、「自分の能力開発のためにやる」と考えることを否定するわけではありません。もちろん、そういう動機でパラレルキャリアを始める場合も多く、それは重要なきっかけでしょう。

 ただ、義務感や悲愴感だけだと、長続きはしないでしょう。実際のところ、パラレルキャリアは楽しいのです。第3回でお話ししたように、そもそもサードプレイスは、まったりと楽しめる日常生活の潤滑油でもあります。顔なじみの人と同時に、ふだん会えないいろいろな人たちと、地位や肩書抜きで、対話を楽しめる場であるわけです。

 たとえば、田中氏は、経営学習研究所という一般社団法人で、いくつものワークショップを企画しています。音楽、食、酒など、さまざまジャンルに関わるワークショップが多いのですが、そのひとつが「酒場学習論」です。

「古今東西、人は酒場で育てられてきた」というテーマのもとに、酒場でどのような学びがあるか、まじめに(?)語り合うワークショップです。

 こうした趣旨のワークショップですから、当然、実施する場所は酒場になります。よく晴れた気持ちのいい5月の日曜日の朝から、せんべろ(1000円でべろべろに飲める)の聖地・赤羽のとある酒場の二階を借りきって、ワークショップが実施されました。学びに関心のあるたくさんの、のんべえたちが集合し、ワークショップは大いに盛り上がりました。

酒場学習論の事前宿題!?

 パラレルキャリアといっても、酒場学習論のように、自分の趣味と絡めて楽しく実践すればいいわけです。実際、筆者も酒場学習論で、もともとの友人、そして新しく知り合った人たちとともに楽しい日曜日を過ごしました。

 ただ、田中氏が筆者に課した酒場学習論の事前宿題は、実にハード(?)なものでした。筆者は酒場学習論の幹事団のひとりだったのですが、酒場の学びを語るワークショップを実施するのだから、最低でも2回は、大衆酒場でひとり飲みを経験するということが、事前の宿題だったのです。

 筆者は、ひとり飲みが大の苦手です。生来の人見知りなので、見知らぬ酒場で、お店の人や周囲のお客さんたちとどう接していいかわからず、なんとも居心地の悪い時間を過ごしてしまうからです。